中東危機と原油高を跳ね返すマーケットの底力、個人消費拡大に波及するか?

「AI革命」と称される時代を画する技術革新の波が市場を襲っています。巨大テクノロジー企業における巨額の設備投資、激しい先端技術の分野での先陣争いは現時点でも続けられています。

その流れが結果的に米国および世界の企業活動を活気づけ、設備投資を大きく引き上げています。日本でも4月15日に発表された2月の機械受注において、船舶と電力を除いた「民需」が前月比+13.6%と大幅に伸びました。比較可能な2005年4月以降では最大の伸びを記録しています。これなどはその表れでしょう。

東証プライム市場の出来高はいまや30億株を連日超えており、時価総額は1,300兆円に達しました。信用取引の買い残も5兆円台に定着しています。

株式市場が活況に沸くと、経済のあらゆる領域に好調の波が伝播していきます。この好影響はいずれ個人消費の拡大につながっていき、日本経済の根幹が拡大するものとして早くも期待が寄せられています。

「高市ラリー」だけではない、日本株の株高3つの要因とは?

今回の株高は、2月8日に行われた衆院選での自民党の歴史的な大勝に因っているのでしょう。高市政権の経済政策をはやした株高、いわゆる「高市ラリー」がいつまで続くのか、という点に議論が集中していますが、私はそれもひとつの理由だと認めるものの、株高の要因はそれだけではないと考えています。

高市ラリーのほかに、米国で急速に進展するAI革命、そして日本企業の構造改革、という3つの側面が重なって株価を突き上げているとみられます。その点について順を追って述べます。

【1】高市政権の経済政策、成長戦略と株式市場

今回の株価上昇の最大の要因は、やはり高市政権の経済政策にあるはずです。自民党が衆院の3分の2を超える議席数を確保したことは、今後の政策遂行の上で絶対のパワーを得たことになり極めて大きな意味を持ちます。

高市政権が推進する成長戦略は「責任ある積極財政」、すなわち拡張的な財政政策と産業政策の同時推進がポイントです。2025年11月に打ち出した21兆円規模の経済対策では、「防衛、資源安全保障、造船、先端技術(半導体、宇宙開発、海洋開発、サイバー、核融合)」を軸として、政府が主導する形での目指すべき成長モデルが明らかに示されました。

衆院で圧倒的多数を得た現在、これらの政策課題が粛々と実行されてゆくことになるはずです。株式市場はその部分にストレートに反応しており、それだけ大きな期待を寄せていることになります。

【2】米国のAI革命の光と影

2022年11月の「Chat-GPT」のリリースをきっかけに始まった生成AIブームは、単なるブームにとどまらず、すでに社会に溶け込み、ビジネスや生活を大きく変貌させています。日に日に進化を遂げるAIはもはやブームと呼ぶことはできません。

2026年はAIの社会実装が本格的に始まる年とみられています。それに伴って、世の中は光と影を伴いながら「産業インフラの再構築」とも言うべき新しい動きが始まりました。そのひとつが「SaaSの死」です。

「ソフトウェアの時代」と重宝されたのは過去の話。今後はソフトウェアがAIに取って代わられ、その価値が急速に低下しつつあります。SaaSを前面に出して成長を遂げた企業は、軒並みサブスクリプション・モデルがAIによって吸収され、現在では「ソフトからハードへ」、「アプリからインフラへ」へと資本シフトが始まっています。まだ結論は出ませんが、株式市場では当分の間は楽観論と警戒感が交錯する展開が続くとみられます。

猛烈な新陳代謝を繰り返しつつ、AI・テクノロジー企業の間でも現在の強弱感の交錯する状況を包摂しながら、より強い者に投資資金が一点集中型で流れ込んでゆく状況が強まるのではないでしょうか。

【3】日本企業の構造改革の進展

上記の2点を踏まえた上で、今回の株価上昇の原動力は「日本企業の構造改革の進展」という要素が最も大きいのではないかと考えられます。

なかでも企業のガバナンス改革の定着が根っこの部分を支えています。PBR1倍割れ企業に対する東証からの改善要請、社外取締役の拡充、政策保有株の縮減など、これまでのガバナンス改革のすべてがひとつに合わさって、年明けからの株高を演出しているのではないでしょうか。

企業の構造改革が進んでいるからこそ、「高市ラリー」や「AI革命」の成果が花開いているのであって、それなくしては何も始まらなかったかもしれません。

2026年はさらに新しく、上場企業に対して保有する現預金の使い方への説明責任が問われることになります。

社内に積み上げた現預金をM&Aを含めた成長投資に振り向けるのか、あるいは株主還元をより充実させて配当金支払いや自社株買いに充てるのか。どちらにしても企業経営者によるそれらの判断が、一段と株価を上昇させることになります。

結果的に、日本の株式市場は海外投資家からの長期の投資資金が入りやすくなります。日本株の評価として長年定着していた「成長性の低い、効率の悪い市場」というディスカウント状態から、今後は株価指数を上回るパフォーマンスが見込めるマーケットへと変貌を遂げることになりそうです。
    
そこでは今まで以上に銘柄間のパフォーマンス格差が生じるはずです。日経平均が60,000円の大台を突破したという事実は、資本効率の改善を求める投資家の行動が今後さらに活発になる、まさに「スタート地点での号砲」ということになるのでしょう。

投資家にとっては朗報です。同時に企業の経営陣にとっては気の休まるヒマのない緊迫した状況が続くことになりそうです。