高市政権の半年と、2026年「骨太の方針」への期待
4月21日、高市早苗政権が発足して半年が過ぎました。2月の衆院選で歴史的な大勝を収めて以来、現在も高い支持率を誇っています。日本初の女性宰相として国民的な人気を誇り、衆院に限れば「自民1強」の状態ができあがっています。それだけに高市首相の政策運営には国の内外から熱い視線が注がれています。
それでも今年度内の予算編成は暫定予算の編成を余儀なくされ、スムーズとは言い切れない状態でした。参院ではいまだ少数与党という現実が厳しく突きつけられています。世界の関心はむしろここからの政権運営です。6月には経済と財政の基本方針「骨太の方針」が策定されます。高市政権が本当に実現したい政策がここで全貌を現します。
2026年の「骨太の方針」は例年以上に注目が集まっています。「責任ある積極財政」の旗印の下に、どこまで拡張的な財政政策を打ち出してくるのか。財政膨張を警戒して長期金利は29年ぶりの高水準まで上昇しています。株式市場は楽観に包まれ、債券市場は悲観的な面持ちで見守っています。
「食料品消費税ゼロ」という悲願と、立ちはだかる壁
焦点のひとつが「2年間の食料品の消費税ゼロ」の公約です。消費減税は高市氏自身の悲願でもありました。日本維新の会と連立を組む上での最優先事項でもあります。
「2年間の食料品の消費税ゼロ」はあくまでもつなぎ措置で、その先には「給付付き税額控除」の導入が控えています。経団連は中・低所得層の負担を軽減するためにも、簡素な形でよいから2年も待たずに「給付付き税額控除」を早く導入すべきだという立場です。
首相官邸は「社会保障国民会議」を招集し、「給付付き税額控除」および「2年間の食料品の消費税ゼロ」の議論をスタートさせています。財源の確保、小売店のレジシステムの変更負担など、技術的な問題が山積みです。
減税の恩恵はどこへ?小売・メーカー・外食への波及効果
「2年間の食料品の消費税ゼロ」が実現した場合の影響はどこまで及ぶのでしょうか。
消費者にはプラスの影響が大きいと見られます。販売価格が下がって消費マインドが上向くことが期待されます。
ただし物価対策としては、経済学者からも消費者へのアンケート調査でも否定的な意見が多く聞かれます。個人消費への刺激策としては単純にプラスとはならない可能性も否定できません。
小売・食品メーカー:数量増の期待と「値下げ圧力」の懸念
小売業者:消費税減税の恩恵を最も受ける業種
スーパーなどの小売業者は最も直接的にプラスの効果があるとされています。食料品の消費税がゼロになれば、それはそのまま実質的な値下げであり、顧客の来店動機に直結すると見られています。
生活防衛意識が特に強いのは所得レベルの中間層、低所得層です。そのグループに対して特にインパクトが大きいでしょう。ディスカウントストアや食品比率の高いスーパー、ドラッグストアにはメリットがあると考えられます。
ただし業者間の競争も激しくなりそうです。減税が終了した時の反動減も避けられません。減税の終了間際には買いだめも発生しやすく、それだけにマイナスの影響はさらに大きくなる恐れもあります。
食品メーカー:効果は一長一短
食品メーカーへの影響はプラスとマイナス、両面ありそうです。消費税がゼロになれば店頭価格は下がり、数量ベースでの需要が増える点がプラスの側面です。保存のきく加工食品や冷凍食品、調味料は特に販売数量が伸びるでしょう。
しかし販売店からはその分の値下げ要請がかかるケースが考えられます。卸売価格の引き下げは食品メーカーにはマイナスで、特にPB商品に力を入れているスーパーではそのような動きが強まりそうです。食品メーカーにとっては一長一短の効果となりそうです。
外食:低・中価格帯に追い風、高級店には限定的
外食業界はふたつに分かれます。ファストフード、ファミレス、居酒屋などの低・中価格帯のカテゴリーはプラスの効果が大きいと見られます。食品価格の低下が外食需要の増加につながるはずです。来店客数が増え、食材の仕入れ負担も小さくなり、コスト低減の効果が出るはずです。ただしその分だけ競合店との価格競争が強まる可能性もあります。
一方で高級料理店やデパ地下など高級食材店への影響は小さくなりそうです。高級食材の購入や高級料理店の利用は、消費税の変動くらいではさほど変わらないと見られます。消費税ゼロや「給付付き税額控除」などの政策の主眼は、あくまで中・低所得層に対する負担の軽減にあるからです。
注目の関連銘柄:地域密着スーパーから大手外食チェーンまで
ライフコーポレーション(8194)
首都圏と近畿圏で食品スーパー「ライフ」を展開する大手スーパー。2005年に三菱商事(8058)が資本参加し現在は持分法適用会社。三菱商事の食材調達ネットワークをフル活用して、近年は特に高い成長を続ける。ネットスーパーは自社での展開と併せてアマゾン・ドットコム[AMZN]とも提携。米国で人気の「ホールフーズ」をそのまま日本に移植したようなオーガニックスーパー「ビオラル」にも力を入れる。
平和堂(8276)
滋賀県で圧倒的なシェアを持つスーパー。愛知、大阪、京都、岐阜、福井、石川など合計170店を展開する。優良スーパーが多く加盟するニチリウグループに属する。前期は客数・客単価ともに向上したため売上高は+2.5%伸びたが、人件費など販管費が+3.2%伸びたため、営業利益は▲0.4%減少した。2030年までの目標として売上高5000億円(現在4560億円)、営業利益率4.5%(同2.9%)、ROE8.0%(4.9%)を掲げる。
ロイヤルホールディングス(8179)
「ロイヤルホスト」を展開するファミレスの草分け的存在。空港・高速道路のレストラン、「リッチモンドホテル」、施設内食堂も展開する。食材にこだわり店舗で調理する「ロイヤルホスト」を旗艦ブランドに、天丼の「てんや」、サラダバーが人気の「シズラー」、ピザの老舗「シェーキーズ」、アメリカンマフィン専門店の「ミセスエリザベスマフィン」も展開する。2027年度には売上高1875億円(現在1654億円)、営業利益100億円(76億円)、ROE12%(10%)を目指している。
吉野家ホールディングス(9861)
牛丼の「吉野家」と「はなまるうどん」を全国で展開。2026年3月末時点で「吉野家」は国内で1287店、海外で1041店、「はなまるうどん」は420店、その他の店も合わせてグループ全体で2891店を展開する。かつては牛丼一筋の単品経営だったが、2004年に「はなまるうどん」を傘下に収めたところから単品路線を転換。2013年の「すきやき御膳」の大ヒットにつなげた。現在はラーメン、カレーうどんなど34ブランドを展開する。2029年度には売上高3000億円(現在2256億円)、営業利益150億円(80億円)を目指している。
