荷風の「日和下駄」には、東京は緑(樹木)の多い町であると書いてあったと思います。公園が多いとかではなく、どの通りにも街路樹が植わっていて、それは外国諸国と比べても特徴的であるということですが、言われてみると確かにそのようです。
従って東京の季節感も必然的に街路樹に大きく左右されます。花の香りで春を知り、むぅっとした葉の匂いで夏を感じ、紅葉が秋の訪れを示唆し、枯葉と共に冬が来ます。大手町でのミーティングのあとオフィスまでまっすぐ歩いて帰ると10分程度なのですが、更に10分程遠回りをして皇居東御苑を通ってみました。大手門から入り平川門に抜ける、400メートル程度の散歩です。平川門のすぐ内側には「梅林坂」と言って綺麗な紅白の梅が植わっています。音のない、静かな世界ですが、仄かに梅の匂いが立ちこめています。平川門を出ると、オフィスは既に目と鼻の先なのですが、会社のすぐ脇の生け垣の沈丁花もこの数日でほころび始め、あの独特な香りを強烈に発散し始めました。季節感のある町は素敵ですね。