荷風の「日和下駄」には、東京は緑(樹木)の多い町であると書いてあったと思います。公園が多いとかではなく、どの通りにも街路樹が植わっていて、それは外国諸国と比べても特徴的であるということですが、言われてみると確かにそのようです。
従って東京の季節感も必然的に街路樹に大きく左右されます。花の香りで春を知り、むぅっとした葉の匂いで夏を感じ、紅葉が秋の訪れを示唆し、枯葉と共に冬が来ます。大手町でのミーティングのあとオフィスまでまっすぐ歩いて帰ると10分程度なのですが、更に10分程遠回りをして皇居東御苑を通ってみました。大手門から入り平川門に抜ける、400メートル程度の散歩です。平川門のすぐ内側には「梅林坂」と言って綺麗な紅白の梅が植わっています。音のない、静かな世界ですが、仄かに梅の匂いが立ちこめています。平川門を出ると、オフィスは既に目と鼻の先なのですが、会社のすぐ脇の生け垣の沈丁花もこの数日でほころび始め、あの独特な香りを強烈に発散し始めました。季節感のある町は素敵ですね。
- 松本 大
- マネックスグループ株式会社 取締役会議長 兼 代表執行役会長、マネックス証券 ファウンダー
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ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社を経て、ゴールドマン・サックス証券会社に勤務。1994年、30歳で当時同社最年少ゼネラル・パートナー(共同経営者)に就任。1999年、ソニー株式会社との共同出資で株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)を設立。2004年にはマネックス・ビーンズ・ホールディングス株式会社(現マネックスグループ株式会社)を設立し、以来2023年6月までCEOを務め、現在代表執行役会長。株式会社東京証券取引所の社外取締役を2008年から2013年まで務めたほか、数社の上場企業の社外取締役を歴任。現在、米マスターカードの社外取締役、Human Rights Watchの国際理事会副会長、国際文化会館の評議員も務める。