新築物件は価格高騰、供給減

マンションを中心とした不動産で、リノベーション物件への需要が高まっている。新築物件の価格高騰や供給減が主因となっている。

不動産経済研究所が10月21日に発表した「首都圏 新築分譲マンション市場動向(2025年9月)」によると、東京23区のマンション平均価格は1億3764万円で、前年同月比で27.7%の上昇となっている。一方、供給戸数は同11.7%減の542戸だった。首都圏の平均価格は9956万円だった。

価格上昇の要因は建築費や人件費の高騰が背景にあるほか、円安などを受けて外国人から見た価格の割安感もあるとみられている。投機対象になり、これが上昇に拍車をかけているとの見方もある。供給減は人手不足に加え、好立地が少ないなどの面もあるようだ。

都内で増加するリノベーション物件

こうした中で、東京のマンションで築15年以内の比較的新しい物件のリノベーション販売が広がっている。8月2日付の日本経済新聞によると、東京23区で2024年10月~12月に売り出された築15年以内のリノベーション物件は前年同期比20%増の275件だった。不動産会社による築浅物件の買い取り、再販が増加している。

なお、住宅改修にはリフォームとリノベーションがある。リフォームは「改善・改良」という意味で、経年劣化による給湯設備の老朽化、外壁の損傷などの箇所を改修し、新築時の状況に近い状態に改善することを指す。一方、リノベーションは「刷新・修復」で、主に既存の建築物自体に改修を加え、価値を高めることを表す。中古物件について、間取りや配管を変更することでブラッシュアップするなどのケースが多い。

基準の厳格化でコスト増の一方、信頼性は向上

東京都では「東京のしゃれた街並みづくり推進条例」を制定している。これは東京の都市づくりを総合的に進めるには、都心部を中心とした大規模プロジェクトだけではなく、既成市街地の再編整備や街並みに配慮した街づくりなど、地域の実情に即した都市再生を行っていくことが重要との考え方による。リノベーションの活用も進める方針だ。

また、2025年4月には建築基準法が改正されている。中古マンションや戸建ての大規模修繕や大規模リフォーム時に建築確認・構造関係規定などの「建築基準適合調査」などが必要になるケースが出てくる。耐火性能の基準も変更され、省エネ基準の適合も義務化されている。コスト増になる一方、一定の性能・品質が保証されることになり、リノベーション物件にとっては信頼性の向上という点で追い風といえる。

リノベーション関連銘柄をピックアップ

スター・マイカ・ホールディングス(2975)

中古の区分マンションを買い取り、リノベして再販する事業を展開。賃貸中の物件を購入し、家賃収入を得つつ、居住者の退去後にリノベして売却するというビジネスモデル。事業エリアは首都圏が中心。晴海アイランドトリトンスクエアビュータワー(東京都中央区)では2024年に71戸を一括購入し、以降順次販売している。

【図表1】スター・マイカ・ホールディングス(2975):週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2025年11月20日時点)

LAホールディングス(2986)

総合不動産業。中古マンションやオフィスビルの再生・販売を軸に成長。都心一等地の中古高級マンションで独自のリノベを施すなど商品性の高さに定評がある。福証、名証、札証に重複上場。地元に密着し、経済情報を収集。新築物件、ヘルスケア向け賃貸も手掛ける。

【図表2】LAホールディングス(2986):週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2025年11月20日時点)

イーグランド(3294)

首都圏でマンションの中古再生事業を展開。かつては不動産競売物件市場からの仕入れが多かったが、近年は一般流通市場が軸。仕入れノウハウに定評。中古マンション、中古戸建を1戸単位で仕入れ、同社がリノベの設計、工事監理、完了検査を行う。販売は各地元の不動産仲介会社を活用。首都圏の高額物件の取り扱いを本格化させている。

【図表3】イーグランド(3294):週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2025年11月20日時点)

ツクルバ(2978)

リノベーション・中古住宅プラットフォーム「cowcamo(カウカモ)」を展開。独自の顧客・物件データベースを活用し、購入、売却双方に向けたサービスを展開している。不動産仲介手数料、リノベ事業者などのあっせん手数料、インテリアなどの販売収益、自社不動産の販売収益などで利益を上げるビジネスモデル。

【図表4】ツクルバ(2978):週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2025年11月20日時点)

カチタス(8919)

戸建の中古住宅再生事業を全国展開。全国130店舗以上で、年間5000戸以上を販売。買取・販売でトップシェア。ニトリホールディングス(9843)と資本業務提携し、家具付き住宅の販売も行う。やや不便な立地でも低価格を武器に業績を拡大。建築コスト上昇などを要因とした新築着工件数の減少が追い風になっている。

【図表5】カチタス(8919):週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2025年11月20日時点)