11月14日をもって、3月期決算企業の第2四半期決算発表がおおむね終了しました。今回の決算では、当初の予想より利益見通しを引き上げる企業も一定数みられました。ただし、米国のトランプ関税の行方がまだみ切れないことや、中国との関係の不透明感、さらに国内政局の変動など、先行きを慎重にせざるを得ない材料が多く残っています。
このような背景から、業績の上方修正はあったものの、全体としては力強く広がるというより「限定的な上振れ」にとどまったとい読う印象です。
とはいえ、年度末に向けて企業側の保守的な利益予想が徐々に見直されることへの期待もあります。今後は「その上方修正はいつ起きるのか」というタイミングが、市場参加者にとって大きな関心事となっています。今回のレポートでは、利益予想の修正の動きを手がかりに、今後の相場環境や注目すべき業種を考えていきます。
リビジョンウォッチが示す株価トレンドの転換点
利益予想の修正は投資の世界では「リビジョン」と呼ばれます。企業の利益見通しを引き上げることは上方リビジョン、逆に引き下げれば下方リビジョンです。TOPIX(東証株価指数)を構成する全銘柄について、この上方/下方リビジョンを集計すると、指数全体として業績がどちらの方向に動いているか、つまり「業績の勢い」を把握できます。この集計値が「リビジョンインデックス」です。
ただし、リビジョンインデックスには弱点があります。業績が上方修正されると、市場はその情報をすぐ織り込むため、株価の先行指標としてはやや力不足になりやすいのです。そこで筆者は、今後の株価変動をより先取りしやすい指標として「リビジョンウォッチ」を考案しました。
リビジョンウォッチは、本連載の9月24日付の記事「利益予想修正指数(リビジョンインデックス)から見た市場環境と有望業種の選別方法」で詳細を説明しています。簡単に言うと、以下の2点に着目する指標です。
・リビジョンインデックスそのものの水準(業績の勢い)
・その水準が過去と比べてどう変化しているか(改善/悪化の方向性)
たとえ現在のインデックス水準が低くても、「変化」がプラスであれば、将来の改善につながりやすくなります。逆に、足元の水準が高くても、「変化」がマイナスならば、この先は勢いが弱まる可能性があるというわけです。
図表1は、水準(横軸)と変化(縦軸)を2つの軸でプロットしたものです。このプロットは、多くの局面で時計回りに循環していく特徴があり、これが「リビジョンウォッチ」という名称の由来です。特に、赤い矢印が示すように、変化がマイナスからプラスへ転じ、続いて水準もマイナスからプラスに向かう局面は、株価上昇の起点となりやすい重要なシグナルになります。
注2:母数はTOPIX構成銘柄
注3:リビジョンインデックス水準の計算は今期予想の経常利益を対象に算出しており、QUICK Workstation Astra Managerの出力値を3週平均している。リビジョンインデックス(RI)変化はRI水準からそれ以前の水準との差。それ以前の水準とは4週前までの12週の平均値とする。算出方法詳細は本連載の9月24日付の記事「利益予想修正指数(リビジョンインデックス)から見た市場環境と有望業種の選別方法 」参照
出所:QUICK Workstation Astra Managerを用いて、マネックス証券作成
直近は11月17日(月曜日)から始まる週になります。リビジョンインデックスは、3週平均で6.34ポイントとプラス圏を維持する一方、変化は-6.94ポイントとマイナスに沈んでいます。実は9月27日付のレポートでは、「変化のプラス幅が縮小していくと水準そのものもマイナスに沈む恐れがある」と注意喚起していましたが、図表1の紫色の線が示すように、当時の懸念が現実味を帯びつつあります。これが、足元で株価が力強さを欠いている一因と考えられます。
もちろん、今年度は全体として企業業績が減益見通しですが、すでにその多くが株価には織り込まれているため、相場が急落するリスクは限定的だと考えられます。しかし、リビジョンウォッチが再び右上方向(改善方向)へ向かうまでは、株価の明確な上昇トレンド入りを待つ時間帯が続く可能性があります。改善が見えてくるのは1~2ヶ月後とみるのが妥当でしょう。
リビジョンウォッチの改善が見られる業種に注目、内需系から見える投資チャンスとは?
市場全体の利益予想の修正が厳しい環境にあるからこそ、逆にリビジョンウォッチが改善している業種は相対的な希少性から注目が高まりやすいと考えられます。そこで業種別にリビジョンウォッチを確認してみます。
図表2は、電気機器業種のリビジョンウォッチです。TOPIX全体と同じく、業種内の全銘柄についてリビジョンを集計し、水準と変化をプロットしています。9月27日掲載時点以降に絞って見ると、電気機器は水準こそプラスを維持しているものの、変化がマイナス領域に沈みこんでおり、グラフの動きも青矢印が示すように左下方向です。この状態では、リビジョンウォッチの観点から電気機器の株価には足元では大きな期待が持ち難い局面と言えます。
注2:母数はTOPIXの電気機器を構成する銘柄
注3:リビジョンインデックス水準の計算は今期予想の経常利益を対象に算出しており、QUICK Workstation Astra Managerの出力値を3週平均している。リビジョンインデックス(RI)変化はRI水準からそれ以前の水準との差。それ以前の水準とは4週前までの12週の平均値とする。算出方法詳細は本連載の9月24日付の記事「利益予想修正指数(リビジョンインデックス)から見た市場環境と有望業種の選別方法 」参照
出所:QUICK Workstation Astra Managerを用いて、マネックス証券作成
一方で、内需系のいくつかの業種では改善の傾向がみられます。今回、特に注目する3つの業種「陸運業」「倉庫・運輸関連業」「サービス業」を図表3~図表5で示しました。いずれも、青矢印が示す様にグラフが直近にかけて右上方にシフトしています。
これらの業種の中で、さらに利益予想の上方修正が大きい銘柄に絞り込むアプローチが効果的と考えられます。
注2:母数はTOPIXの陸運業を構成する銘柄
注3:リビジョンインデックス水準の計算は今期予想の経常利益を対象に算出しており、QUICK Workstation Astra Managerの出力値を3週平均している。リビジョンインデックス(RI)変化はRI水準からそれ以前の水準との差。それ以前の水準とは4週前までの12週の平均値とする。算出方法詳細は本連載の9月24日付の記事「利益予想修正指数(リビジョンインデックス)から見た市場環境と有望業種の選別方法 」参照
出所:QUICK Workstation Astra Managerを用いて、マネックス証券作成
注2:母数はTOPIXの倉庫・運輸関連業を構成する銘柄
注3:リビジョンインデックス水準の計算は今期予想の経常利益を対象に算出しており、QUICK Workstation Astra Managerの出力値を3週平均している。リビジョンインデックス(RI)変化はRI水準からそれ以前の水準との差。それ以前の水準とは4週前までの12週の平均値とする。算出方法詳細は本連載の9月24日付の記事「利益予想修正指数(リビジョンインデックス)から見た市場環境と有望業種の選別方法 」参照
出所:QUICK Workstation Astra Managerを用いて、マネックス証券作成
注2:母数はTOPIXのサービス業を構成する銘柄
注3:リビジョンインデックス水準の計算は今期予想の経常利益を対象に算出しており、QUICK Workstation Astra Managerの出力値を3週平均している。リビジョンインデックス(RI)変化はRI水準からそれ以前の水準との差。それ以前の水準とは4週前までの12週の平均値とする。算出方法詳細は本連載の9月24日付の記事「利益予想修正指数(リビジョンインデックス)から見た市場環境と有望業種の選別方法 」参照
出所:QUICK Workstation Astra Managerを用いて、マネックス証券作成
リビジョンインデックスを最新データで確認する方法
ここからは補足的な話題です。
リビジョンウォッチは計算処理に手間がかかるものですが、比較的簡単に業種のリビジョンの傾向をとらえるものとして、マネックス証券のウェブサイトで提供している「銘柄スカウター」では最新のデータでリビジョンインデックス(RI)を確認することができます。
図表6の青丸印から1週間の水準を見ることができます。そして「1ヶ月の変化」の項目で出力された水準と比較して、足元の水準が改善しているのかを合わせて見ることが大切です。また、業種一覧タブ(図表6の赤丸印)からは業種別のリビジョンインデックス(RI)を確認することができます。
