高市政権が本格始動、17項目に及ぶ戦略分野が発表される

臨時国会における代表質問が始まって、高市早苗政権が本格的に始動しました。最大の注目点は、日本の成長戦略です。高市首相は所信表明演説の中でも「強い経済をつくる」と繰り返し言及しており、日本の経済成長をどのように実現させるのか、国内外の投資家は重大な関心を持って日本政治の行方を注視しています。

ポイントは、安部元首相の看板政策である「アベノミクス」に倣った「サナエノミクス」です。アベノミクスと同様に高市政権も「財政拡張、金融緩和」を底流に置いていますが、最も異なる点は成長戦略そのものにあります。アベノミクスでは「3本目の矢」である成長戦略が後回しにされたという点が付きまといました。高市政権において成長戦略のかじ取りを担うのは、新たに設けられた「日本成長戦略会議」です。

11月10日に初会合が開かれ、そこで17項目に及ぶ戦略分野が具体的に列挙されました。その中でも特に重点項目として挙げられたのが、造船(重要物資としての船体)、サイバー攻撃、フードテック(農業の大区画化、食料安保)、エネルギー(ペロブスカイト太陽電池)、核融合、マテリアル(レアアース)、防衛(軍民両用)です。

国家安全保障を重視する方向に

とりわけ防衛産業への力の入れ方に関しては、自民党と連立政権を組む日本維新の会との連立合意書でも「安保3文書の改訂前倒し改定」が盛り込まれたように、高市政権において一段と拍車がかかるとみられます。

高市首相の所信表明演説でも防衛費をGDP比で2%の水準まで前倒しで増額すると踏み込んだ方針を打ち出しました。早ければ、2025年度の補正予算での実現を目指しています。

小林鷹之・自民党政調会長は11月8日、防衛費はGDPの2%水準よりもさらに上乗せする必要があるとの見解を示しました。政府は国家安全保障を重視する方向に大きく舵を切った模様です。改めて防衛関連株に注目する必要がありそうです。

三菱電機、島津製作所など防衛関連株をピックアップ

以下に防衛関連の企業をピックアップしました。

三菱電機(6503)

重電大手メーカーの一角を占める。制御機器、レーザー加工機、ロボットなどFA関連に強く、パワー半導体では国内トップ。消費者向けのエアコン、家電製品からエレベーター、タービン発電機、人工衛星、暗号技術まで、取扱い品目は多岐にわたる。三菱重工業とともに防衛省向けの防衛装備品を多数受注しているが、守秘義務によって会社からの説明は少ない。レーダー・ミサイルシステム、指揮統制システム、人工衛星による観測ソリューションを手がけており、航空機と合わせて防衛・宇宙システム事業は高い受注の伸びを続けている。

【図表1】三菱電機(6503):週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2025年11月13日時点)

島津製作所(7701)

分析・計測機器の世界的企業。研究開発型企業としてガスクロマトグラフ、液体クロマトグラフ、環境測定機器、材料試験機など、独自技術による分析機器を数多く生み出す。2002年には、同社の研究員である田中耕一氏がノーベル化学賞を受賞した。医療機器をはじめ、航空機、半導体・ディスプレイ向けなど、気体、液体、固体、遺伝子、タンパク質のあらゆる物の性質を分析する技術を有する。航空機用のエアマネジメントシステム、コックピットディスプレイ、ヘッドアップディスプレイ、磁気探知システム、フライトコントロールは防衛装備品にも応用される。

【図表2】島津製作所(7701):週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2025年11月13日時点)

極東貿易(8093)

機械類を主軸とするエンジニアリング商社であり、戦後の財閥解体で三井物産から分離独立した名門企業。鉄鋼、自動車、電機、化学、プラント用の機械装置や石油掘削機器、資源開発機器など、取り扱う機械・部品類はきわめて広い。同社が独自に開発した高機能素材「SOLIMIDE」は断熱、吸音に優れ、薬品にも強く不燃性も高い。極高温、極低温にも耐え、有毒ガスも発生しないため、NASAの「スペースシャトル」や宇宙ステーション、各国の艦艇、潜水艦、高速艇などの防衛装備品、原発の格納容器の断熱材、LNGタンク、パイプラインに広く採用されている。

【図表3】極東貿易(8093):週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2025年11月13日時点)

ソリトンシステムズ(3040)

ネットワーク構築に強い独立系のITメーカー。日本にLANが導入された1980年代後半からネットワークのパイオニアとして有名。自社開発にこだわり、ソフトウェアを含めオリジナル製品の開発に特化している。主力製品である「Soliton OneGate」(ソリトン ワンゲート)は、複数のクラウドをまとめて認証し、フィッシングによる認証情報の詐取を防ぐ。ほかにも「Attack Surface Management」は、外部に公開されたサーバーやネットワーク機器の脆弱性を探り、サイバー攻撃のリスクを低下させる。ウクライナ政府の協力の下で、遠隔操作によるがれき撤去の実証も行っている。

【図表4】ソリトンシステムズ(3040):週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2025年11月13日時点)