夜間市場についての私の考えを数回に亘ってお話ししたいと思います。マーケットは築地の市場に似ています。朝行くと大勢の仲買人やお寿司屋さんが売買しています。(例え話なので細かい描写に間違いがあっても御容赦下さい。)例えばそこでマグロが10万円で売買されていれば、そこにヒョコっと主婦が入っていってそのマグロを10万円で買っても、恐らくそれはフェア・ヴァリューでしょう。
ところが夜に築地に行っても誰もいません。仮に1人だけ仲買人がいたとしましょう。「おじさんマグロちょうだい。」「10万円だよ。」あなたはそこで買う以外に選択肢がありません。もしかしたら大漁の船が既に陸揚げをしていて、明朝のマグロ市場は8万円で始まるかも知れないと仲買人が思っていてもです。プロと個人の情報較差の激しい夜間に、プロがマーケットを作り、そこに個人が当たって行くというのは、この夜の築地に似ていると思います。登場人物は、仲買人=プロのディーラー、お寿司屋さん=機関投資家、主婦=個人投資家です。仲買人が1人でなくて2人でも、状況はあまり変わらないですよね。
- 松本 大
- マネックスグループ株式会社 取締役会議長 兼 代表執行役会長、マネックス証券 ファウンダー
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ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社を経て、ゴールドマン・サックス証券会社に勤務。1994年、30歳で当時同社最年少ゼネラル・パートナー(共同経営者)に就任。1999年、ソニー株式会社との共同出資で株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)を設立。2004年にはマネックス・ビーンズ・ホールディングス株式会社(現マネックスグループ株式会社)を設立し、以来2023年6月までCEOを務め、現在代表執行役会長。株式会社東京証券取引所の社外取締役を2008年から2013年まで務めたほか、数社の上場企業の社外取締役を歴任。現在、米マスターカードの社外取締役、Human Rights Watchの国際理事会副会長、国際文化会館の評議員も務める。