米ドル高・円安急加速のテクニカルな理由
自民党の高市新総裁誕生を受けて、米ドル高・円安が急拡大した。これは、テクニカルに見ると長く続いた米ドル/円の小動きを「上放れ」したことの影響が大きいということではないか。
米ドル/円は、自民党総裁選までの約2ヶ月も、何度かいわゆる「ダマシ」はあったものの、基本的には146円半ば~148円半ばと約2円の狭いレンジで方向感のない展開が続いていた(図表1参照)。普通、小動きが長く続くほど相場のエネルギーが溜まり、小動き終了後は溜まったエネルギーの発散で一方向へ大きく動きやすい。今回の場合は、高市新総裁誕生が米ドル/円「上放れ」のきっかけとなり、米ドル高・円安が急加速したというのが基本ではないか。
米ドル/円は、トランプ米大統領就任前に記録した158円の高値から、4月には一時140円割れまで下落した。その後の反発局面のピークは151円台だったが、今回はそれを上回る動きとなった(図表2参照)。米ドル/円の戻り高値を更新したことで、普通に見れば158円までの「全値戻し」の可能性も出てきたということになる。そうしたことも、米ドル高・円安が加速したテクニカル要因だろう。
日米金利差から大きくかい離した円安=「日本売り」なのか?
ただし、米ドル高・円安の急加速は、日米金利差(米ドル優位・円劣位)からは大きくかい離している(図表3参照)。最近は「日本の金利上昇=円買い」という金利と円の「正の相関」ではなく、日本の財政赤字を懸念した「日本の金利上昇=円売り」という「負の相関」になっているとの説明はあるものの、その割に株価は大きく上昇する動きが続いていることからすると、「日本売り」という感じはしない。
すでに見てきたように、テクニカルには、米ドル/円の「上放れ」や戻り高値更新など、米ドル高・円安が勢いづく理由は理解できるものの、それが金利差から大きくかい離したまま続くかと言えば、なお懐疑的ではないか。
52週MAで考える=155円を大きく超えず、11月初めまでに149円以下へ?
高市新総裁誕生をきっかけとした米ドル高・円安の急加速により、米ドル/円は足下で149円程度の52週MA(移動平均線)を大きく上回ってきた(図表4参照)。経験的に米ドル/円下落トレンドが続く中でのあくまで一時的な上昇なら、52週MAを5%以上大きく、1ヶ月以上長く上回る可能性は低い。
それを参考にすれば、今回の米ドル/円上昇がトレンドと逆行する一時的な動きに過ぎない場合は、155円を大きく上回らない程度にとどまり、遅くとも11月初めまでには再び52週MA以下に戻る、つまり150円を大きく割れる水準まで米ドル安・円高に戻るという見通しになる。
