最近、クマ出没のニュースを頻繁に見かけます。昨日は、国内女子ゴルフツアーのプロアマ戦が子熊出没で中止になり、今日の本戦(第1ラウンド)までも中止になったとか。街中を歩くクマの映像を見るたび、「いよいよ人と動物の境界線が曖昧になってきたのかな」と少し怖くなります。

私自身も、昨年、知床でヒグマと遭遇しました。車で道路を走っていたら、道の真ん中を悠々と歩くクマにばったり。その翌日には羅臼岳へ登る予定だったので、急遽クマ鈴を買い足し、クマよけスプレーもレンタルし、ポケットに笛を入れて登山へ。「クマさん、ちょっとだけおじゃましますね」という気持ちで登ったことを思い出します。

クマが街に出てきている背景には、いろいろな理由があると言われています。里山放棄や林業衰退で山が荒れ、木の実が減ったこと。住宅開発やゴルフ場建設で、逆に私たちがクマの生活圏に入り込んだこと。そして最近は、クマ自身が学習して、「人間は怖くない」「街は餌が豊富」と覚えてしまったのかもしれません。ここまで来ると、クマ問題は単なる動物対策ではなく、国家的リスクマネジメントの領域だと感じます。

クマの数は年々増えていると推測されている一方で、全頭にICチップを埋め込むことも、全部駆除することも現実的ではありません。クマ感知カメラやセンサー網で完全に出没を予知するのも難しい。山間部には死角も多く、クマの行動は突発的です。

では、どうするか。「ICチップなし」で個体を追跡でき、クマを検知したら山へ誘導する仕組みを考えなくてはならない時期に来ているのでしょう。高解像度AIカメラやサーマルカメラを張り巡らせ、時にはドローンでパトロールしてAI画像解析で空中から検知し、音や光などの嫌悪刺激でクマを山へ戻す。そんな「境界線テクノロジー」が、一般的になる日も遠くない気がします。街へ出たクマを自動で検知し、「そっちじゃないよ、山へ帰ろう」と教える仕組み。クマにも人にも選択肢と学びを与える。そんな仕掛けが、これからの街づくりと自然管理DXと言えるのかもしれません。

さて、今年も登山シーズンが始まりました。「日本百名山制覇の旅」はまだまだ続いています。私は幸いまだ山中でクマに会ったことはありませんが、すれ違った登山者の方に「この先にクマいたよ」と教えられた経験はあります。 今年はクマ鈴をもう一つ買い足して、安全第一で山を楽しみたいと思います。山と街の境界線、その意味を少し考えながら。