上昇続く香港ハンセン指数

中国株の2025年5月30日終値~6月30日終値までの騰落率は、上海総合指数は+2.9%、香港ハンセン指数は+3.4%と回復基調となっています。

中国株はトランプ政権の関税政策の影響で急落しましたが、その後は基本的に回復基調が続いています。香港ハンセン指数の動きを見ると、5月上旬に50日移動平均線の上に突き抜け、その後は調整があっても50日移動平均線前後で下げ止まり、上昇が続いている形です。

上昇転換の要因は、言うまでもなく米中協議の進展です。5月12日に、スイス・ジュネーブで行われた米中貿易協議の共同声明が発表されました。その後6月26日にはラトニック米商務長官が「米国と中国が先月スイスのジュネーブで合意に達した関税などに関する貿易枠組みの合意について最終的な理解の取りまとめに至った」とコメント。その後、トランプ大統領が中国との貿易合意に調印したと明らかにしています。

今回の米中の関税問題については色々な見解があるかと思いますし、フェンタニルの輸入問題など、様々な課題が残されてはいます。しかし、全体の交渉を俯瞰してみると、中国は拙速に動かず、レアアース(希土類)などの独自の強みを材料に粘り強く交渉し、協議は当初よりも緩やかな交渉・内容となっており、結果、中国株の回復につながっています。

また、中東情勢がとりあえずは緩和方向に向かい一時的に急騰していた原油価格が落ち着いてきたことや、米国のインフレや景気が落ち着いているため米国の利下げ期待が強まり、米ドルが下落傾向となっていることから、世界の投資資金がアジアの新興国市場に流入しやすい状況となっていることも中国株の回復を後押ししています。

なお、香港ドルは米ドルにペッグしているため(1米ドル=7.75-7.85香港ドルの範囲で米ドルに連動する)、米国の利下げは香港株にとってプラスに働きます。

中国当局の景気刺激策も期待

一方、中国当局もこの米中関税問題を含めた景気減速に対して対策を打ち出しています。国家発展改革委員会は6月26日に「以旧換新(古い製品の買い替え)」政策の第3次支援資金について、7月に交付する方針を明らかにしています。また、中国商務部は全国の中小都市や農村部を対象に新エネルギー車の販売促進策を展開するとの通知を発表。具体的には2025年7-12月に各地で試乗体験や買い替え支援などを進めます。7月末に開かれる中央政治局会議以降に追加景気刺激策も期待されているところです。

なお、中国の景気ですが、そこまでは悪化していません。7月1日に発表された6月のCaixin中国製造業PMIは50.4となり景況感の境目である50を回復しています。また、中国の輸出の動向を見ると、4月は前年比8.1%増、5月は4.8%増と決して悪い数字ではなく、5月の小売売上高は前年比6.4%増、鉱工業生産は前年比5.8%増と、こちらも悪くありません。

米依存脱却へ、中国のハイテク企業に再注目

企業業績も悪くありません。例えば、時価総額ベースで最大企業のテンセント(00700)の2025年1-3月期決算は、売上が前年同期比12.9%増、純利益が14.2%増と増収増益で、売上高、粗利益、株式報酬費用調整後の営業利益、同純利益額とも四半期として過去最高をマークし、また市場予想を上回る利益での着地となっています。

テンセントに次ぐ、IT大手のアリババ(09988)の2025年1-3月期決算も、売上は前年同期比5.9%増、純利益が前年同期比62.4%増(ただし、こちらはのれんの減損損失が大きく縮小した効果によるもので、実質は小幅増益)と増収増益を維持しています。

今回の決算発表ではテンセントもアリババもAIを重要視し、その投資を加速させる意向を示しました。このことで短期的には費用増が利益成長を圧迫する可能性があります。しかし長期的には、オープンソース戦略によってグローバル開発者と連携を深め、世界標準となるような強力なAI基盤を築く可能性があります。

中国のハイテク企業は、その広範かつ強力な影響力から、それを懸念した中国当局から厳しい監視対象となり、株価が大きく下落した長期的な経緯があります。しかし、米中対立問題の中で、米国へのIT技術依存を縮小しようとしている中国政府の意向から、再び注目できるセクターになるのではないかと考えます。