モトリーフール米国本社、2025年6月 9日 投稿記事より
株式市場が不安定な時期を経て落ち着きを取り戻しつつある今こそ、今後10年間に可能性を秘めた魅力的な成長株に目を向ける好機です。投資家が長期保有を検討対象となり得る業種を超えた5つの成長株をご紹介します。
1. 台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング(TSMC)
台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング(TSMC)[TSM]は、人工知能(AI)ブームにおいて最も重要なプレーヤーの1つです。世界最大の受託チップメーカーであるTSMCは、AIインフラからスマートフォン、自動車技術に至るまで、さまざまな製品を支える先進的な半導体を製造しています。
これらのチップの製造は、最先端のテクノロジー、精密な製造、そして規模を必要とするため、容易ではありません。TSMCのような能力や実績を持つ企業は世界でもごくわずかであり、競合他社が苦戦する中、TSMCは強力な価格決定力も獲得しています。
そのため、先端ノードとパッケージング(保護・電気的接続・放熱・実装)におけるリーダーシップにより、同社はトップクラスのチップ設計者にとって頼りになるパートナーとなっています。先端ノードとは、より多くのトランジスタをチップに集積できる製造プロセスのことで、これにより性能と電力効率が向上します。
一方、AIチップを含む高性能コンピューティングの需要は爆発的に増加しています。AIのワークロードが増加する中、TSMCは将来の需要に対応するため、主要顧客とともに生産能力の拡大を進めています。
AIのサプライチェーンにおいて極めて重要な役割を担っているにもかかわらず、TSMCの株価は依然として妥当な水準にとどまっています。AIインフラと半導体全般の継続的な成長から利益を得ようとする長期投資家にとって、TSMCは保有するのに最適な銘柄です。
2.ピンタレスト
ピンタレスト[PINS]は、ビル・レディCEOの下で静かながら力強い変革を遂げました。過去3年間にわたって、同社はテクノロジーに多額の投資を行い、現在全世界で5億7,000万人を超える月間アクティブユーザーを抱える巨大なユーザーベースを成長エンジンに変えてきました。ピンタレストはもはや単なるオンラインのビジョンボードではなく、広告コンバージョン機能を備えたショッピング可能なプラットフォームとなりました。
ピンタレストの変革の大きな原動力のひとつは、AIの導入です。同社は、ユーザーが何を探しているかをよりよく理解するために、画像とテキストの両方で学習したマルチモーダルモデルを構築しました。これは、パーソナライズされたレコメンデーションの原動力となり、さらに、「ビジュアル検索」機能により、ユーザーはピン留めされた画像に表示された商品を簡単に見つけ、買い物をすることができます。一方、バックエンドでは、「Performance+」プラットフォームが、より効果的なキャンペーンを実施するためのツールを広告主に提供しています。
決算結果が上記を物語っています。前四半期、ピンタレストの売上高は16%急増しました。ユーザー1人当たりの平均売上高(ARPU)はすべての地域で上昇し、特に米国外では、ピンタレストはアルファベット[GOOGL]との提携により、新興市場におけるユーザーの収益化を進めています。
ピンタレストの株価は依然として魅力的な水準にあり、同社はユーザーベースの収益化に向けて着手したばかりです。AIを搭載したツールと、より買い物しやすいプラットフォームを備えたピンタレストは堅実な長期投資先となる可能性を十分に持っているでしょう。
3.ダッチ・ブロス・インク
ダッチ・ブロス・インク[BROS]は、レストラン業界で最も魅力的な拡大ストーリーを描いている企業のひとつになりつつあります。全米18州に1,000店舗強を展開する同社は、2029年までに店舗数を2,029店舗まで倍増させ、最終的には全米7,000店舗のコーヒーショップを展開する可能性を秘めています。
ドライブスルーに特化した小型店舗は、建設費が安く、ユニットエコノミクスが魅力的で、投資回収期間が短いというメリットがあります。
さらに魅力的なのは、ダッチ・ブロスがこれから成長のための重要な仕組みを動かし始めようとしている点です。例えば、モバイル注文はまだ初期段階ですが着実に広がりを見せており、前四半期の取引に占める割合は11%でした。モバイル注文はロイヤリティ・プログラムにも連携しており、マーケティングやプロモーションをパーソナライズすることができます。
同社はまた、一部の店舗で朝食の売上を促進するために新製品をテストするなど、食品にも力を注いでいます。スターバックスの売上高の20%近くをフードが占めるのに対し、ダッチ・ブロスは足元でフードが占める割合は2%未満で、ここには成長の余地があります。さらなるメニュー拡充と出店が控えており、ダッチ・ブロスは長期的な成功企業となり得るでしょう。
4.フィリップ・モリス・インターナショナル
フィリップ・モリス・インターナショナル[PM]は、ディフェンシブ産業の成長株です。多くのたばこ会社が米国でのたばこ販売量の減少に苦しんでいる中、フィリップ・モリスは国内でたばこを販売していないため、その点については心配する必要はありません。その代わり、従来の紙巻きたばこよりも単位当たりの経済性が高い「ズィン(Zyn)」と「アイコス(Iqos)」に代表される無煙たばこポートフォリオが成長を牽引しています。
急成長しているニコチン入りパウチのズィンは、同社最大の成長ドライバーであり、第1四半期の米国での出荷量が53%急増したことがそれを証明しています。
一方、同社のプレミアム加熱式タバコ製品であるアイコスは、欧州と日本で引き続き人気を博しており、メキシコシティ、ジャカルタ、ソウルなどの新規市場では早くから成功を収めています。さらに、アルトリア・グループ[MO]から米国での権利を買い戻したことで、米国は次の大きな成長ドライバーとなる可能性を秘めています。同時に、同社の伝統的なたばこ事業は、強力な価格決定力と安定した需要に支えられ、海外では引き続き堅調な業績を維持しています。
強力な価格決定力、関税の影響を抑える現地生産、ズィンとアイコスの需要拡大を背景に、フィリップ・モリスは今後も力強い成長を遂げる体制が整っています。
5.イーライリリー・アンド・カンパニー
イーライリリー・アンド・カンパニー[LLY]は、急成長を続けるGLP-1薬市場でリーダーとしての地位を確立しており、需要の急増が引き続き堅調な売上高の伸びを牽引しています。前四半期、同社の2つの主要なGLP-1薬である「マンジャロ(Mounjaro)」と「ゼップバウンド(Zepbound)」の売上高は合わせて61億ドルに達し、前年同期比で大幅に増加しました。ゼップバウンドは、肥満の成人または少なくとも1つの体重関連疾患を有する過体重の成人の体重減少を適応症として食品医薬品局(FDA)から正式に承認されており、マンジャロは2型糖尿病の成人への適応で承認されていますが、現実には、これらの薬剤の成長は、体重減少の適応外処方によってけん引されています。
しかし、イーライリリーにとって最大のゲームチェンジャーとなる可能性のある薬剤は、まだ開発途上にあります。同社初の経口GLP-1薬候補である「オルフォグリプロン(Orforglipron)」は、最近実施された第3相試験で、この薬を服用した患者は大幅な体重減少を示しました。経口薬であるため、注射薬であるGLP-1薬よりもはるかに利便性が高く、注射を嫌がる患者には特に魅力的な選択肢です。
また、オルフォグリプロンは注射剤に比べ、冷蔵保存や注射ペンを必要としないため、製造や流通も容易です。このため、イーライリリーは注射用GLP-1ポートフォリオで見られた供給上の制約を回避できる見込みです。オルフォグリプロンは市場で最も強力な経口GLP-1減量薬になる可能性があり、同社は将来の継続的成長に向けて有利な立場にあります。
免責事項と開示事項 記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。元記事の筆者Geoffrey Seilerはフィリップ・モリス・インターナショナルとピンタレストの株式を保有しています。モトリーフール米国本社はピンタレストと台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング(TSMC)の株式を保有し、推奨しています。モトリーフール米国本社はダッチ・ブロスとフィリップ・モリス・インターナショナルを推奨しています。モトリーフール米国本社は情報開示方針を定めています。