少し時間を遡って、サービス名とドメイン名を決めたときの話です。
創業期は、限られた資金で事業を運営していたため、ロゴやサービス名にこだわっている余裕は全くありません。そもそも、やっている事業が生き残れるかもわからないので、ロゴにこだわるのは無意味というのが、和田と私の思想です(この思想は、その後の新規事業にも受け継がれています)。
そのため、創業期は、自社サービスの根本思想(Coincheckであれば、はやく・かんたんに・便利に、ビットコインが買える)以外はこだわることは捨てました。例えば、Coincheckの提供を始めた時には、Coincheckのロゴはありませんでした。ロゴらしきものは、和田が適当にフリーフォントを使って作りました。それで済ませていました。
サービスもファーストビューも「はやく・かんたんに・便利に、ビットコインが買える」ことを伝えることだけにフォーカスしていました。他の要素は、ユーザーにとって雑音でしかないので一切書きませんでした。
ちなみに、カラーコードもサービス名もドメイン名も、和田がほぼ一人で決めて作りました。私と10分くらい会話をしましたが、会議室で議論して決めるようなプロセスはなしです。そのような議論プロセス自体が無駄だと考えていました。たとえば、カラーコードを決めた時の会話は次のような感じです。
「うーん。IT系のサービス画面に使っている色って濃い青が多いよね。競合サービスは濃い青や緑なので、うちは親しみのある薄い青にしようか。で、アクションボタンは補色のオレンジにしますか」
と1分ほどで決めました。たとえば、サービス名を決めた時の会話は次のような感じです。電話で10分位、話をして決めました。
和田「大塚さん、そろそろ、サービスリリースするのでドメインをとるんですが、サービス名決めなくちゃいけないんですが、どうしましょうかね??」
大塚「うーん。競合はbitなんちゃらか。なんかbitって濁音多くて堅いよね?」
和田「うーん。そうですね。bitなんちゃらか、海外だとcoinbase、Bitstamp、Bitfinexとかですかね」
大塚「bitよりはcoinの方が親しみがあって、『はやく・かんたんに・便利に、ビットコインが買える』っぽいよね」
和田「そうですね。となると、coinなんちゃらか、なんちゃらcoinかですかね」
大塚「そうだね」
和田「coinbit、bitcoin、coin……coincheck」
大塚「音の響き的に、coincheckっていいかもね」
和田「そうっすね。決済もやるし、チェックはいいかもですね。ドメイン空いてるか調べますね…あ、空いてますね。とりあえず、これにしますか。ドメイン取っておきます」
大塚「とりあえず、それにしておくか。じゃあ、それでプレスリリース書いておくよ」
という流れです。
カラーコードやサービス名を1時間会議して決めても、事業成果には何も影響はないというのが私たちの流儀です。この流儀が全てだとは思いません。しかし、無駄なことには時間を割かない。本質的なことにだけ時間を割く。コインチェックらしいカルチャーを象徴するエピソードです。