政権1期目の減税案の議会成立後に起こった「悪い金利上昇」
トランプ政権1期目の減税案は、2017年12月に議会で成立した。ところが、それから間もなく2018年1月に入ると、米金利の上昇に伴う日米金利差(米ドル優位・円劣位)拡大を尻目に米ドル/円は急落に向かう「悪い金利上昇」が起こり、それは2018年1月から3月下旬にかけて2ヶ月以上も続いた(図表1参照)。

米長期金利、10年債利回りは減税案の議会審議が始まる2017年9月まで、低下傾向となっていた。しかし、議会での審議が始まると、その成立を横目に見ながら米10年債利回りは2%から3%を超えるまで上昇した(図表2参照)。

こうした中で、日米金利差も拡大に向かった。2018年1~3月には、金利差拡大を尻目に米ドル/円は下落に向かうという「悪い金利上昇」となったが、それについては株価の動きの影響が大きかったようだ。
米金利上昇でも米国株下落に追随した米ドル=2018年1~3月
2017年1月のトランプ政権発足後、上昇が続いていたNYダウだったが、2018年1月に下落に転じると3月下旬にかけて約1割の反落が起こった(図表3参照)。米金利が上昇し日米金利差は拡大したものの、一方で米国株が下落に向かい、米ドルは下がる株価に追随する形となった。結果的にこの2018年1~3月は、米国株、米国債、米ドルの「トリプル安」局面が2ヶ月以上続いた。

トランプ政権1期目において、減税案の議会成立から間もなく2ヶ月以上と比較的長く米「トリプル安」局面が展開したわけだが、そこで重要な役割を演じたのは株価だったのではないか。減税案の議会成立を前後し、米10年債利回りは約1年にわたり上昇したが、その中でも米国株が下落した2018年1~3月は米ドルも下落する「悪い金利上昇」、米「トリプル安」の局面となった。ではなぜ、米国株は2018年1~3月に下落したのか。
NYダウの90日MA(移動平均線)かい離率は、2018年1月には10%以上に拡大した(図表4参照)。つまり、トランプ政権発足後1年にわたり株高が続いたことで、さすがに短期的には「上がり過ぎ」懸念が強くなっていたようだ。このため、減税案の議会成立を受けた米金利の上昇は、むしろ「上がり過ぎ」修正のきっかけとなり、その後約1割の株価下落、「トランプ減税ショック」をもたらしたのだろう。

米金利上昇に米国株は耐えられるのか=「米国売り」第2幕に要注意
トランプ政権1期目に起きた減税案の議会成立後の米国株、米国債、米ドル「トリプル安」という「トランプ減税ショック」について見てきた。政権2期目においても、減税案の議会審議が本格化する中で、米金利が上昇し、それに対して米国株、米ドルが下落し反応する場面も出てきた。これは、この先もさらに続くのだろうか。
今回は減税案がまだ議会で成立する前の段階で、2025年4月にいわゆる「関税ショック」が起こり、株価は急落した。このため、短期的な「上がり過ぎ」の修正で、株価が反落に転じた1期目のケースとは違うだろう。ただし、2018年1月と異なり、今回は株価の地合いが弱いとも感じられる。トランプ減税が財政赤字拡大の懸念からさらなる米金利上昇をもたらすようなら、それに米国株は耐えられず、下落リスクが再燃する可能性には注意が必要だろう。
そして、もしもそれが現実になった場合は、米ドルは上がる金利ではなく、下がる株価に追随する可能性が高そうだ。結果として、米「トリプル安」が再燃し、4月に起こった「米国売り」の第2幕といった様相になるリスクも要注意である。