夏期休暇前、7月からポジション圧縮拡大する傾向

ヘッジファンドの取引を反映しているCFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋の円ポジションは、5月6日時点で買い越しが17万枚以上と空前規模の状況が続いていた(図表1参照)。ではこの空前の円買いポジション手仕舞いは、いつ本格化することになるだろうか。

【図表1】CFTC統計の投機筋の円ポジション(2005年~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

2024年にかけては米ドル高・円安傾向が続いたことから、足下とは逆に円売りポジションの拡大が目立っていた。2022年以降で見ると、その円売りポジションは7月にかけて急縮小するパターンが繰り返された(図表2参照)。そうした中で、米ドル/円は2022年から2024年にかけて3年連続で7月陰線(米ドル安・円高)となったのだった。

【図表2】CFTC統計の投機筋の円ポジション(2022年1月~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

なぜ7月にかけてポジションが急縮小する傾向があったのか。それはトレーダーの夏期休暇の影響が大きかったのではないか。夏期休暇に入る前に、過大なポジションを縮小するということ。そう考えると、足下の大幅な円買いポジションが仮に7月にかけて続いた場合は、夏期休暇前のポジション整理が拡大する可能性は十分ありそうだ。

円買いポジション手仕舞い本格化の分岐点は150円か

もう1つのポジション整理拡大の条件は、損失回避だろう。空前の円買いポジションも、それが利益を出している間は手仕舞いを急ぐ必然性はない。ポジション手仕舞いが加速する可能性が高まるのは、そのポジションに損失が発生し、それが拡大する懸念が出てきた場合だろう。そうした観点からすると、重要なのは損益分岐点と考えられる。

ヘッジファンドの場合、損益分岐点の目安は過去半年平均、例えば120日MA(移動平均線)と見られている。その120日MAは足下で151円程度(図表3参照)。以上からすると、150円を大きく超えて米ドル高・円安が広がりそうになった場合は、円買いポジションの損失拡大を警戒して手仕舞う動きが加速する可能性が高まるのではないか。

【図表3】米ドル/円と120日MA(2022年~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

関税巡る日米交渉にも大きく影響か=円安

空前の円買いポジション手仕舞いが本格化すると、円売りが拡大し円安が広がる可能性が出てくる。円安はトランプ政権では非関税障壁と位置付けられていることから、円安の拡大は関税交渉での日米合意を目指す上で大きな障害になる懸念がある。以上を踏まえると、日本政府は円安が150円を超える前、または7月になるまでに米政府との合意を目指すことが重要になるのかもしれない。