先週の中国株ですが、上海総合指数と深セン総合指数、創業版指数は揃って反発となり、香港ハンセン指数も続伸となっています。先週の材料ですが、何と言っても、中国政府が4月2日(水)に小規模な景気刺激策を発表したことです。内容としては概ね予想どおりの内容です。保障房(低所得者向け住宅)の建設、鉄道の拡充、中小企業の減税などです。もっとも、これらは3月に開催された全人代で発表されているものとほとんど同じです。その実行の明言と、若干の加速を意味する内容ですから、大きなサプライズというわけではありません。おそらく昨年7月に行われた小規模な景気刺激策と同レベルだと思います。

また、金融緩和についてはその内容に含まれませんでした。このため、4月3日(木)の本土株式市場は失望感から反落となっています。ただ、少なくとも昨年7月に実施された小規模な景気刺激策は効果がありました(実際に、効果が薄れてきた昨年末より中国経済は失速している)。そして、なにより株式市場にとってプラスなのは、当局の意図が、当面は成長を犠牲にしてでも、汚職の取り締まりなどの綱紀粛正を推進し、シャドーバンキングなどの悪い信用拡大を阻止するものだと考えられていたのに対し、成長の確保は必須だとわかったことです。これは株価の急騰につながるような即効性はないものの、今後ジワジワと効いてくると思います。実際のところ、4月4日(金)には本土株式市場は金融株、不動産株を中心に反発となっています。

 香港株も基本的に前述の刺激策を好感して高値で推移しています。特に刺激策に大きく関連する鉄道株が相場を牽引しました。ただ、4月4日(金)は米国の雇用統計発表を控えた警戒感から利食い売りに押されて値を下げています。香港株の今後についてですが、しばらくは現在の株価水準で横ばい気味の株価推移が続くのではないかと予想します。ただ、セクターや個別を見ると、若干の変化があると思います。現在米国株式市場では、これまで相場を牽引してきた優良成長株が総じて軟調です(米国に上場する百度(BIDU)などの中国企業も軟調です)。この影響を受けて、香港市場でも、これまで相場を牽引してきたテンセント(00700)などが軟調となっています。しかし、その資金が逆にこれまで売られて割安感もある銀行株や不動産株に流れる形が続くのではないかと予想します。

コラム執筆:戸松信博