米金利からかい離する日独金利急上昇という異例
米独の長期金利、10年債利回りの値動きはこれまで基本的に連動してきた(図表1参照)。これは、金融政策の影響が大きい短期金利と違い、グローバリーゼーションの時代にあって、長期金利は「世界一の経済大国」米国の長期金利の影響を強く受ける結果と考えられた。

そうした観点からすると、先週(3月3日週)顕著になった米独の長期金利のかい離はかなり異例なものだっただろう。ドイツが画期的とされる財政拡張プランを示したことを受けて、独長期金利は米金利からかい離した上で記録的な急騰となった(図表2参照)。

似たようなことはすでに日本の長期金利でも起こっていた。2月に入る頃から、日本の10年債利回りは米10年債利回りからかい離しながら大きく上昇するところとなった(図表3参照)。

日独など先進国の長期金利が大きく上昇した背景とその共通点
日独など先進国の長期金利が、米長期金利からかい離しながら大きく上昇した背景にはある程度共通点もあったと考えられる。米トランプ大統領が掲げる「アメリカ・ファースト(米国第一主義)」においては、米国以外の国への協力は米国にとってプラスかが基準になるようだ。逆に米国にとってプラスでなければ協力姿勢は大きく後退するので、相手国は自己責任の必要性が高まる。2月末の米国とウクライナの首脳会談が、「歴史的決裂」となったことで、それはいよいよ現実問題として受け止められるようになったのではないか。
「アメリカ・ファースト」のトランプ政権の下、米国以外の国では経済も安全保障も自己責任の度合いを大きく高める必要がある。それは特に財政負担の拡大となると想定され、財政赤字拡大、債券需給悪化という連想から、債券価格の下落=債券利回りの上昇を後押ししたと考えられる。
上述のように、これまで日独など先進国の長期金利は、基本的に米長期金利と連動する傾向が強かった。ただし、最近の金利水準は「米国>独>日本」のため、金利差変化はより金利水準の高い米金利が低下するか、上昇するかで決まるのが普通だった。
ところが、最近にかけて米金利からかい離して日独などの金利が大きく上昇するようにもなった。これは、金利差米ドル優位が当初の想定以上に縮小する可能性をもたらすものだけに、金利差の観点からはより米ドル安になる可能性がありそうだ。