先週の中国株ですが、上海総合指数と深セン総合指数、創業版指数は揃って下落となり、香港ハンセン指数は続伸となっています。本土の株式指数が大きく下落した要因は大きく2つあります。まず、2月24日に発表された中国の1月の新築住宅価格において、住宅ローン規制などを背景に前年同月比の伸び率が1年ぶりに減速したことと、いくつかの銀行が不動産向け融資を差し止めたとの報道が流れたことです。これらのニュースにより不動産銘柄が全般的に売られました。2つめの理由は中国人民銀行が25日に公開市場操作で1000億元の入札を実施し、流動性を吸収したことです。
一方、香港市場も週初は前述の中国不動産に対する懸念などで軟調だったのですが、主に下記の3つの理由で週央から盛り返しました。1つは香港の曽俊華財政長官が2014年は香港経済の成長が加速すると述べたことが好感されたこと。2つめはテンセント(00700)が電子商取引大手の京東商城の出資に向けて取り組んでいることが伝えられて時価総額の大きな同社株が上昇したこと。3つめは中国関連株が全般的に軟調となる中で、中国の銀行株に割安感があるといった推奨レポートがいくつかの証券会社から出て、中国の銀行株に買いが入ったことです。
先週のもう1つの気になる動きは人民元の為替レートの急落です。2月28日は20年ぶりの大きな下げを記録しています。報道によると中国人民銀行(中央銀行)が、人民元の上昇にレバレッジをかけて投資を行う短期投資筋を追い出すために、国営銀行を通じて市場介入を行っている可能性があるとあります。そして、一定ラインの人民元を割り込まない限り、有利な利回りを提供する金融商品の設定があり、これらの反対売買が執行される可能性があるため、人民元相場の下落は更に続く可能性があります。人民元の下落は中国の輸出企業にとっては有利に働く可能性がある一方、先週の香港市場では資産価値の下落を理由に中国関連株が売られる一因ともなりました。今後、更に人民元相場の下落が続くようであれば注意が必要でしょう。
コラム執筆:戸松信博