2025年2月13日(木)22:30発表(日本時間)
米国 生産者物価指数(PPI)
【1】結果:総合、コアいずれも市場予想を上回る結果 前月分は上方修正

1月の米国生産者物価指数(PPI)は前年同月比3.5%上昇し、市場予想の3.3%上昇を上回りました。前月12月分も速報値の3.3%上昇から3.5%上昇へと上方修正されています。物価動向の風向きを確認できる前月比ベースでは0.4%上昇となり、市場予想の0.3%上昇を上回ったものの、前月の0.5%上昇(速報値0.2%上昇)からは伸びが鈍化しました。
変動の大きい食品とエネルギーを除いたコアPPIは、前年同月比3.6%上昇し、市場予想の3.3%上昇を上回りました。前月12月分は速報値の3.5%上昇から3.7%上昇に上方修正されています。前月比ベースでは0.3%上昇と市場予想と一致しましたが、前月の0.4%上昇から伸びは鈍化しました。
【2】内容・注目点:食品とエネルギーが指数を押上げたがPCE構成項目は総じて抑制的
そもそもPPIとは
PPIとは、米国の生産者物価指数のことを指し、原材料や製品を対象として生産段階での財・サービスの価格変動を測定しています。
例えば、机などの家具で考えると、企業が机という商品を生産するために仕入れる木材や金属といった原材料の価格変動を測定するのがPPIであるのに対し、CPIは最終的に消費者が購入する際の机の価格変動を測定します。
必ずしもそうとは限らないものの、一般的に、企業が仕入れる原材料の価格変動は、最終的に消費者が支払う価格に反映されることが多いため、PPIはCPIの先行指標として注目されています。

また、PPIの項目のうち、ポートフォリオ管理費や航空運賃、外来医療費などは、FRB(米連邦準備制度理事会)がインフレ指標として採用している個人消費支出(PCE)価格指数の算出に用いられるとされています。このため、PPIは月末に発表されるPCE価格指数や、今後の金融政策の動向を予測する上でも注目が集まります。
1月結果の内訳・詳細
今回1月のPPIの結果は、総合指数(前年同月比)が事前の市場予想を上回って、前月から横ばい(前月分は上方修正)とやや高止まりを示した格好で、ヘッドラインの数値からは今後のインフレ圧力の継続が示唆される結果となりました(図表2参照)。

図表3の通り、前月比の内訳を見ると、財価格は12月の+0.5%から12月は+0.6%へと、やや伸びが加速しました。卵価格が前月比+44%と急騰するなど食品価格が+0.4%から+1.1%へと大きく加速したほか、エネルギー価格も+1.7%と前月に続き大きく上昇したことが主な要因です。
エネルギー価格の上昇については、1月に入ってからのWTI原油先物価格の上昇と一致しています(図表4参照)。ただし、1月中旬以降は低下基調となり2月に入ってからも比較的落ち着いた動きとなっていることから、来月のPPIではエネルギー価格はそこまでの押上げ要因とはならないことが想定されます。

食品とエネルギーを除いたコア財価格は前月比+0.1%上昇と、前月から同水準で落ち着いた価格推移となっています。
一方、サービス価格は1月に前月比+0.3%となり、12月の+0.5%から伸びが鈍化しました。主な要因は、流通業(小売・卸売)のマージン手数料が+0.6%から+0.1%に鈍化したことです。この項目の低下は、インフレの観点では物価上昇をけん引しているサービスインフレの落ち着きを示す好材料といえますが、下落が続く場合には、流通業の利益率低下や需要全体の減速が意識されるため、今後は適度な水準での伸びが続くか注目です。
そしてFRBが金融政策の判断材料とする、個人消費支出(PCE)価格指数に関連する項目は、総じて抑制的な結果となりました。前月に+5.0%と大きく上昇していた航空運賃は1月に-0.3%と低下し、ポートフォリオ管理費も+0.6%から+0.4%へ落ち着きを見せました。
さらに、ヘルスケア関連項目も全体的に前月から低下しています。
【3】所感:CPI後のインフレ再燃懸念を和らげる良好な結果 月末のPCEを要確認
今回のPPIは市場予想を上回り、前月分も上方修正されました。ヘッドラインの数値だけを見るとインフレ懸念を生じさせる結果ですが、上昇の主因は変動の大きい食品とエネルギーであり、中身を見るとPCE(個人消費支出)価格指数を構成する項目が総じて抑制的だったことなどから、全体としてはインフレ再燃への懸念をやや和らげる内容だったといえるでしょう。
今回のPPIの結果を受け、市場では米長期金利が低下し、株式市場は上昇で反応しています。
CPIとPPIで強弱異なる結果となったほか、トランプ大統領の政策の影響が不透明であることから、市場では次の利下げ時期を巡る見方が揺れていますが、FRB(米連邦準備制度理事会)が利下げの決定にあたって採用しているインフレ指標はPCE価格指数です。答え合わせとして、PPIとCPIそれぞれの各項目などを基に算出される月末のPCE価格指数の結果に注目しましょう。
フィナンシャル・インテリジェンス部 岡 功祐