トランプ大統領が華々しくホワイトハウスに戻り、スピーチで「米国の黄金時代の始まり」を宣言しました。早速多くの大統領令にサインし、エネルギー緊急事態宣言や移民政策の見直しなど、多岐にわたる政策を打ち出しています。これらを通じて、彼の強烈なリーダーシップを再び強く感じます。規制緩和を通じてイノベーションを加速させる姿勢は、米国という巨大な経済エンジンに再び火を入れようとしているように見えます。

リーダーシップには色んな形があると言われますが、トランプ大統領のそれは、強い自己信念と揺るぎない自信を核にしたトップダウン型です。絶対的な決定権を好み、周囲に忠誠心を求めるスタイルは、彼のビジネス経験に由来しているものと思われます。ビジネスと政治の違いはありますが、確かに、アメリカのような巨大な国家を短期間で動かすには、このような強力なリーダーシップが効果を発揮する場面も多いはずです。日本的な「協調型」や「合意形成型」のリーダーシップは、緻密な調整が求められる場面では有効ですが、グローバルな競争の中ではスピードを失いがちです。一方で、異論を排除する体制では盲点が生じやすく、価値観の硬直化がイノベーションを阻害するリスクもあります。短期的には大きなインパクトが期待できる一方で、その先の未来に向けて、どれだけ持続可能な基盤を築けるのかはまだ未知数だと感じます。第一次政権で見られた賛否両論を踏まえつつ、2期目ではどのような変化が生まれるのかにも注目しています。

一方で、私自身のリーダーシップスタイルは、トランプ氏とは対照的な民主型/トランスフォーメーショナル型だと考えています。大きな方向性やビジョンを示しつつ、組織が自立的・主体的に動ける環境を整え、多様な意見を取り入れて創造的な解決策を見出すことを目指しています。例えば、当社ではM&Aを積極的に活用していますが、これは異なる価値観や文化、技術を取り入れることで長期的な企業価値拡大を図る取組みの一環です。多様性を価値創造の源泉としてとらえ、組織の成長ドライバーに位置付けています。

トランプ政権では、ESGやDEIに対する懐疑的な姿勢が顕著であり、これらを「不必要な規制」として撤廃する動きが見られます。確かに、形式的な数値目標や過剰な規制が企業にコストを強いるという主張は一理あります。しかし当社では、形式的なKPIを持たず、企業風土や価値観としてのDEIを重視しており、これらを基盤に新しい視点や創造的なアイデアを生み出すことを目指しています。コストではなく価値創造の手段としてのDEIが、組織の競争力を高める重要な要素であると信じています。

果たしてトランプ政権は、「黄金時代」を実現できるのでしょうか。その手腕や政策がもたらす影響はしばらく不確定要素が多く、マーケットのボラティリティも高まることが予想されます。日本でも、日銀会合での利上げ見通しが注目され、国内外の経済動向が交錯しています。短期的な変化に目を奪われがちですが、冷静に長期的視点を持ちながら、この新しい時代を観察していきたいと思います。