利上げ局面でも米ドル安になった1期目

2017年からスタートしたトランプ政権1期目において、当初FRB(米連邦準備制度理事会)は利上げを継続した。政策金利のFFレートは0.5%から2.5%まで合計2%引き上げられたのだった(図表1参照)。

【図表1】米ドル/円と日米10年債利回り差(2024年1月~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

この米利上げを受けて、米ドル/円は上昇したかと言えばそうではなかった。米ドル/円は、トランプ政権1期目が正式に始まる前、いわゆる「トランプ・ラリー」と呼ばれた大統領選挙でのトランプ氏勝利を受けた米ドル急騰で記録した118円という高値を、その後4年間のトランプ大統領の在任中に上回ることはなかった。

上述のように当時FRBは利上げを続けたことから、米国の短期金利は上昇した。FRBが2%の利上げを行う中で、政権発足時に1%程度だった米2年債利回りは、2%程度上昇し3%程度となった。しかし、米ドル/円は2017年後半にかけてむしろ下落傾向が続いた。それは米長期金利が低下し、日米長期金利差米ドル優位が縮小したことに連れたためだった(図表2参照)。

【図表2】米ドル/円と日米10年債利回り差(2016年~2020年)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

今回も長期金利や株価の動向が、米ドル/円の行方の鍵に

トランプ大統領の経済政策は、大型減税に代表されるように、財政赤字を拡大させることから短期金利以上に長期金利の上昇リスクがあると考えられる。ところが、トランプ政権1期目においては、政権発足からしばらく長期金利は低下が続き、米10年債利回りは、2.5%程度から2%割れ近くまで低下した(図表3参照)。トランプ政権1期目において、米10年債利回りが本格的に上昇を始めたのは、いわゆる「トランプ減税」が議会で成立する2017年12月頃からだった。

【図表3】米10年債利回りの推移(2016年~2018年)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

米ドル/円は、当初は米長期金利低下に連れて下落、そして長期金利が上昇を始めるとそれを嫌気するように株価が急落したことに追随し、結局は2018年前半にかけて下落傾向が展開したのだった。

以上、トランプ政権1期目の米ドル/円と米金利の関係を見てきた。今回、FRBの利下げ見通し後退と受け止められた。トランプ政権1期目は利上げ局面にあったが、長期金利や株価との関係から、1期目の米ドル/円の上昇は限られた。今回の場合も、長期金利や株価の動向が、米ドル/円の行方を考える上での鍵になるのではないか。