中央銀行による為替介入は当然その瞬間はかなり効き目があります。但し中・長期的に見ると歴史的に見て殆ど全てのケースで元のトレンドを止めることはできず、中央銀行は「やられて」終わります。マーケットにおいて流れに棹さすことがどれだけ無益なことかよく分かります。
しかしここで忘れてはいけないのは、為替介入の主体はあくまでも「国」であり、主権国家、それも力のある主権国家が本気でマーケットに臨む時は、市場参加者もそれなりの覚悟がいるということです。80円台まで円高が進んだ時の我が国によるドル買い介入は、最終的にはトレンドが反転し、日銀(正確には国の外国為替資金特別会計)は大勝ちで終わりました。でもイギリスとかアジアの国では、最後まで介入が負けて終わったケースもあります。要はどんなに大きな資本家でも、極めて稀ですが、カジノで負けて終わってしまうこともある訳です。トレンドを変えるのはトレンド自体であって、外部からの力ではあり得ないということをよく肝に銘じておきましょう。
- 松本 大
- マネックスグループ株式会社 取締役会議長 兼 代表執行役会長、マネックス証券 ファウンダー
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ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社を経て、ゴールドマン・サックス証券会社に勤務。1994年、30歳で当時同社最年少ゼネラル・パートナー(共同経営者)に就任。1999年、ソニー株式会社との共同出資で株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)を設立。2004年にはマネックス・ビーンズ・ホールディングス株式会社(現マネックスグループ株式会社)を設立し、以来2023年6月までCEOを務め、現在代表執行役会長。株式会社東京証券取引所の社外取締役を2008年から2013年まで務めたほか、数社の上場企業の社外取締役を歴任。現在、米マスターカードの社外取締役、Human Rights Watchの国際理事会副会長、国際文化会館の評議員も務める。