半導体株下落も市場全体に波及せず

S&P500は6週連続での上昇が続いており、先週は0.85%上昇。10月18日(金)には5,864.67となり、史上最高値を更新しました。全体的には経済や企業業績に対する楽観的な見方が市場を押し上げています。大統領選挙の前には株価の調整が起きることが多いのですが、調整することなく株価の上昇が続いているのは、非常に珍しいことです。

先週前半は半導体株の大きなボラティリティが市場に警戒感をもたらしました。10月15日(火)には、オランダの半導体製造装置大手ASMLホールディング[ASML]が弱い売上ガイダンスを発表し、半導体株全体が大幅に下落、テクノロジー指数も下落しました。半導体株は一般的に「早期循環型」株として知られ、リスクが高く、ボラティリティも大きい(株価の変動率が高い)ため、このセクターが問題を抱えているなら市場全体に波及する可能性があると考えられています。

ところが、2日後の17日(木)、台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング(TSMC)[TSM]の決算で、年末までに最先端の半導体パッケージング技術の生産能力を2倍にすると発表されました。これは明らかにエヌビディア[NVDA]の最も高度なAIチップに必要なものであり、AI需要についてはハイパースケーラーだけにとどまらないことを示唆しています。

米大手証券会社がエヌビディア[NVDA]の目標株価を大幅上方修正

17日には、アメリカの大手証券会社が、エヌビディアの業績予想と目標株価の大幅上方修正を行いました。2025年のEPS(1株あたり利益)の予想をこれまでの2.81ドルから2.98ドルへ、2026年はこれまでの3.9ドルを、4.47ドルへ、そして、2027年は4.72ドルから5.67ドルへと上方修正したのです。目標株価の方も、これまでの165ドルから190ドルへ上方修正しています。

エヌビディアの株価は、10月17日に史上最高値を更新して140.89ドルとなり、先週138ドルで引けました。これは17日に更新した史上最高値の140.89ドルまであと2%のレベルです。エヌビディアの決算発表は11月21日の予定です。私はそこまでに業績予想の修正が行われる可能性が高いとみています。

テスラ[TSLA]、決算発発表で今後の成長見通しに言及するか?

金融セクターも先に発表されたジェイピー・モルガン・チェース[JPM]の決算発表に続き好調で、ウェルズ・ファーゴ[WFC]やモルガン・スタンレー[MS]などが強い業績を見せています。モルガン・スタンレーは、株式市場の高水準により、資産運用手数料が増加し、収益に貢献しました。

第3四半期の決算発表については、これまでのところ72社が発表を終えています。9月14日時点では、今回の予想は5.2%の増益予想となっていましたが、現時点では6.7%の増益となっています。

今週(10月21日週)はテスラ[TSLA]やテキサス・インストゥルメンツ[TXN]などの決算発表が予定されています。特に、テスラは10月10日のロボタクシーの発表が期待外れだったため、決算発表で今後の成長見通しについて触れるかどうかに注目が集まっています。

また、政府の自動運転支援ソフトに対する調査が進行中であり、投資家はその結果を注視しています。電気自動車(EV)の採用が鈍化している中で、テスラが需要状況や競合他社に対する戦略について言及すれば、投資家の信頼を取り戻す可能性があるでしょう。テスラはエヌビディアのGPUを使用しているため、テスラの決算はエヌビディアの四半期業績に対する一部のプレビューともなり得ます。