日米それぞれの金融政策の転換で「円高・ドル安」傾向に

今回のテーマは為替市場です。今年はドル円相場が株式市場を幾度も揺さぶっています。日本とアメリカの金融政策の方向性に相違があるからです。

米国の金融政策が緩和基調に転じたのに対して、日本は引き締め政策に移行しているため、その影響が日米間の金利差を通じて為替市場にてきめんに表れています。

米国のFRB(米連邦準備制度理事会)は9月のFOMC(米連邦公開市場委員会)で、4年半ぶりに政策金利の引き下げを決定しました。しかも景気の先行きに配慮して、引き下げ幅は通常の2倍となる▲0.5%にまで踏み込んでいます。一方の日本銀行は、今年3月にマイナス金利を解除したのに続いて、7月末には政策金利を0.25%に引き上げました。

円安は企業にとって、輸出価格を押し下げる効果を持っています。海外売上げの多い企業には販売面でメリットとなりますが、それとともに仕入れ面では輸入価格を押し上げるため、海外から資材を調達する企業にはデメリットとなります。

自動車産業に代表されるように、大手企業は輸出面で円安のメリットを受けるケースが多いのですが、日本企業の多くは中小企業です。これらの企業にとって円安は、原材料価格の上昇など輸入コストという面でデメリットが多くなります。

今年のドル円相場は、7月に1ドル=160円を突破するまでドル高・円安が進みました。その水準で政府からの円買い介入と日銀の利上げが実施され、8月から9月にかけて今度は140円台前半までドル安・円高となっています。

円高はそろそろいいところまで来た、という意見もありますが、日米の金利差を考慮すればもう一段の円高も考えられます。そこで今回は円高がメリットとなりそうな銘柄をご紹介します。

円高への転換がメリットになる4銘柄

構造改革、単価引き上げに成功した吉野家ホールディングス(9861)

「牛丼の吉野家」。「早い、安い、うまい」のキャッチコピーで90年代の世相を席巻。デフレ時代の勝ち組となったが、2000年頃からのBSE流行で苦戦。それを奇禍として牛丼の単品経営から脱し、メニュー構成と店舗レイアウトの大幅刷新を断行。豚丼、うな重、鶏のからあげ、サラダなどを加えて構造改革、単価引き上げに成功。女性客やファミリー向けにも売上げを伸ばしている。「はなまるうどん」も好調。物価上昇と円安による原材料の上昇でQ1は営業減益を余儀なくされたが、円高でコスト高の緩和を期待。

【図表1】吉野家ホールディングス(9861):週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2024年9月26日時点)

ホームセンター大手のコーナン商事(7516)

大阪を発祥とするホームセンター大手。合併、買収戦略を駆使して現在は全国で600店舗を超えた(うち海外16店)。コロナ禍でも出店ラッシュを続け、この10年で店舗数は2倍に増えている。新業態として、大阪では「新・都市型コンセプト店」をうめきたプロジェクトに出店。首都圏では10年ぶりの大型店として1.4万坪のメガモールを船橋インター近くに出す。Q1は売上げが+9%増えたが営業利益は▲4%減。粗利率の悪化が主因で、その7割が円安から来ており、円高への転換はメリット大と見られる。

【図表2】コーナン商事(7516):週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2024年9月26日時点)

全国に100円ショップを展開するワッツ(2735)

100円ショップ大手。「Watts(ワッツ)」、「silk(シルク)」、「meets(ミーツ)」などのブランドで全国に展開。買収、吸収合併を駆使して店舗を拡大しており、今期もQ3の時点で通期計画の160店に対して124店を出した。店舗数は直営1,799店、FC15店、合計1,814店舗となっており、「Watts」と「Watts with」で全体の75%を占める。全国を地域別に5つに分割して経営するのが特徴。キャラクターやデザイナーとのコラボなど、100円ショップで100円以外の商品(300円、500円)の売上比率が上昇。粗利率が改善しQ3は営業利益が前年比2.8倍に急拡大。そこに今後は円高の恩恵が加わることになる。

【図表3】ワッツ(2735):週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2024年9月26日時点)

計測機器の輸入販売、東陽テクニカ(8151)

海外メーカーから計測器を輸入して国内向けに販売。EV向け充電ステーションなどエレクトロニクス業界向けが中心だが、官公庁・研究機関の研究開発用をはじめ、情報通信、自動車、機械制御、環境・エネルギー、海洋調査、ソフトウェア開発、ライフサイエンス、セキュリティなどきわめて多岐にわたる。取引先は日本電信電話(9432)、KDDI(9433)、トヨタ自動車(7203)、本田技研工業(7267)、日産自動車(7201)など大手企業が中心。また自動車の無線放射パターンなどを計測するEMC(電磁適合性、ノイズ対策)の領域では長年、自社製品も研究開発・製造している。輸入製品の取り扱いが中心のため円高によるメリットは大きい。

【図表4】東陽テクニカ(8151):週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2024年9月26日時点)