進む高齢化、さらなる普及が求められるジェネリック医薬品
ジェネリック医薬品とは新薬(先発薬)と同じ有効成分を使い、品質、効き目、安全性が同等の薬(医薬品)のことである。先発薬に比べ開発費が少ない分、価格を抑えることができる。国の厳格な試験も受けている。新発薬の特許が切れると同時に、ジェネリックが登場してくる。国は医療費抑制のために、ジェネリック医薬品の普及を推進している。
厚生労働省によれば、2023年3月の後発医薬品の使用割合(普及率)は89.89%と前回の半年前に比べ0.95ポイント増加したとのこと。国が目標としている普及率80%を大きく上回っている。ただ、高齢化がさらに進む中で、ジェネリック医薬品の一段の普及が求められている。
深刻な供給不足、その背景と業界再編の動き
一方で、ここ数年は供給に対する不安が台頭している。その理由はジェネリック業界での相次ぐ不祥事が要因だ。
発端となったのが2020年12月に福井県のジェネリック医薬品メーカー「小林化工」(非上場)が製造した水虫などの真菌症治療薬に睡眠導入剤の成分が混入した事件。服用後に意識を失うなどの健康被害が出た人が200人以上となり、県から116日の業務停止命令の処分を受け、同社は経営の再建を事実上断念した。
2021年3月には大手3社の一角である日医工(当時は東証1部上場)で品質試験で不合格となった錠剤を砕いて再び加工したなどの品質不正を行っていたことが発覚。経営不振から2022年12月に私的整理の一種である「事業再生ADR」が成立し、2023年3月に上場廃止となった。2023年7月に258品目の販売中止を決定したため、供給不足が深刻になっている。
こうした一連の状況を受けて、2024年7月4日に武見敬三厚生労働大臣がジェネリック医薬品メーカー13社の社長らと厚労省内で面会。供給不安が3年以上続く市場の立て直しに向け、同氏は「業界再編は待ったなし」と伝えたと報じられている。
ジェネリック医薬品を巡っては2024年10月には、患者が先発薬(新薬)を希望した場合に自己負担が増える制度が導入される。また、バイオシミラー(バイオ医薬品の後続品)の使用促進などの国策が追い風となる。安定供給に向けた関連各社の動きが注目される。そこで、今回はジェネリック医薬品に関連した注目銘柄を紹介する。
安定供給に向け、動向が注目されるジェネリック医薬品関連銘柄6選
東和薬品(4553)
ジェネリック医薬品メーカー大手の一角。販売面では開業医向け、疾患別では循環器・呼吸器系などに強みがある。2020年にスペインの同業を買収し、海外展開も育成している。2024年4月に山形工場内の新生産棟が稼働し、年間の生産能力は175億錠(2022年末は120億錠)に増加、安定供給に貢献している。
サワイグループホールディングス(4887)
ジェネリック医薬品のトップメーカー。後発品をフルラインで製造。販売は病院向けや調剤薬局向けでのシェアが高く、報道によれば2024年9月にも増産準備に入るという。2017年に米同業のアップシャー・スミス社を買収し、米国に本格進出。中期経営計画「ビジョン 2030」では最終年度のジェネリック医薬品シェア25%以上(前期実績は17%)、生産能力250億錠(同185億錠)を目指す。3年間で44品目以上の新製品の発売を予定。生産設備の稼働率向上や増産も行うとしている。
富士製薬工業(4554)
ジェネリック医薬品の準大手メーカー。女性医療や急性期医療の領域に強く、バイオシミラー(後続品)にも展開している。2024年9月期は更年期障害薬「エフメノ」、不妊治療薬「ウトロゲスタン」などが伸びて業績は順調に推移。国が普及推進するバイオシミラーでは2024年内に3品目を申請する予定とみられている。2024年7月に新株予約権発行で約9億円強を調達すると発表。調達資金は女性医療領域での新パイプライン導入、生産能力増強、原価コスト低減につながる工場設備投資などに充当する。
日本ケミファ(4539)
後発薬が主体の中堅医薬品メーカー。新薬が中心だったが、2000年頃よりジェネリック医薬品に軸足を移す。売上高の8割超が後発薬。2018年にベトナム工場が稼働し、国内からの生産移転で原価低減が進む。海外展開は2021年度に4ヶ国で5品目だが、2026年度には5ヶ国14品目への拡大を目指す。
ダイト(4577)
医薬品の原薬製造販売や、製剤の製造受託が主力。ジェネリック医薬品メーカー向けに強い。医療機関や薬局などへの販売は直接行っておらず、開発・製造したジェネリック医薬品は他の医薬品企業に販売を委託している。製剤工場は経口固形製剤の製造に特化。特に錠剤、細粒剤の製造が得意。国内だけでなく、海外向け医薬品製剤の受託実績も多数あり。
コーア商事ホールディングス(9273)
ジェネリック医薬品の原薬販売や製造販売が2本柱。商社機能と製造機能を併せ持つビジネスモデルに特徴がある。原薬商社としては世界10ヶ国で90社以上、国内製薬企業100社以上との取引がある。メーカーとしては治験薬から最終製品までの製造が可能という。