暴落前の水準を取り戻した日経平均
日経平均株価は大幅続伸し、終値で3万8000円台を回復した。
前日の米国株式相場の上昇に加え、外国為替市場で円相場が一時1ドル=149円台に下落したことが直接的な買い材料になった。米国株の上昇・円安加速の背景は昨日発表された小売売上高が市場の予想を大幅に上回る強いものだったことだ。それにより米国景気に対する懸念が和らいだ。そもそも今回、日本株急落を招いた要因のうち、明示的なものが米国景気の後退懸念による米国株安・円高への巻き戻りだったわけだから、それらが否定され戻りを辿ったとなれば、日本株も買い戻されるのは当然だろう。
日経平均はチャートからわかる通り、2日の2200円安、5日に4450円安という2つの暴落前の水準を取り戻した。そのような理不尽な、説明のつかないような暴落は「なかったこと」にしたと言える。株式市場が企業価値を反映して株価がつけられるとすれば、わずか2日でその価値が2割近くも吹き飛ぶなんてことはあり得ないからだ。
これら2日に亘る暴落は、完全にミスプライスだとレポートに書いた(8月5日付ストラテジーレポート『ブラックマンデーⅡ、もしくは日本版ブラックマンデー』)。その先の展開については、「いつまでも理屈抜きの相場が続くわけではない。異常なことは起きるが、長くは続かない。よって、この売られ過ぎの相場は早晩、底を打って戻るだろう。展望に書いたように3万5000円辺りまでは速いだろう。そこから上もじゅうぶん反騰ターゲットである。」とも述べた。
想定通り、早速にそのミスプライスは修正されたということである。
日経平均は7月につけた最高値から6日の暴落時の安値までの下げ幅に対して、半値戻しを超え、その6割を取り戻した格好だ。
正確に言うと、今日の高値3万8143円は下げ幅の61.8%に当たる。フィボナッチ級数の61.8は戻りの目途としてよく意識される。
バリュエーション面でも日経平均の予想PERは15倍台を回復した。過去1年間の平均は15.9倍(μ)で、6日の急落はそこから3標準偏差下(μ‐3σ)のレベルまで一気に下がった文字通りの急落だったが、現状は過去平均並みである。過去1年間の平均はオレンジの線で示した15.9倍(μ)だが、青線で示したアベノミクス開始以来2013年からの長期平均のPER(long term μ)は15.2倍である。グラフは昨日時点までのものだから、現在はそれを越えている。
再度上値を目指せるかは新たな買い材料待ち
整理すると、
- 日本株急落を招いた要因のうち、明示的な米国景気の後退懸念による米国株安・円高への巻き戻りは修正されつつあること
- 投資家の狼狽売りによるミスプライスは修正されたこと
- 異常に低下したバリュエーションも過去平均に回帰したこと
これらのことを総合的に考えれば、とりあえず戻りもここまで、となりそうだ。少なくとも極端な割安感は是正され、見方によってはフェアバリューである。ということは、ここからは、新たな買い材料がなければ株価を押し上げることは難しいと考えるのが普通だろう。
今後の展開として3万8000円絡みのもみ合いに移行するのではないかと考える。少し日柄をかけて3万8000円台を固めにいくだろう。これから相次ぐ重要イベント ‐ ジャクソンホール、FOMC、自民党総裁選などに相場がどう反応していくかも非常に重要な点である。
心強いのはNYダウ平均の上昇トレンドがまったく崩れていないということだ。ダウ平均の最高値更新でリスクオン再開 ‐ それがmost likely シナリオのような気がする。