先週の中国本土の株式市場は上海総合指数、深セン総合指数、創業版指数ともにそろって反落となりました。連休明けの先々週は10月8日にHSBCが発表した9月の中国サービス業景況指数(PMI)が52.4と8月の52.8から低下したものの高水準を保ったことなど、中国経済全体の回復への見方が強まり大型株が中心に買われました。しかし先週は16日に中国本土の株式市場で停止されている新規株式公開(IPO)が再開されるとの観測が浮上し、利食い売りが先行し、特に16日(水)に大きく売り込まれました。一方、香港ハンセン指数は米国のデフォルト回避のニュースで前週末からはプラスで推移しています。

 ただ、先週発表された経済指標も中国経済の順調な回復を裏付けるものとなっています。まず、中国の2013年7-9月期のGDP成長率が事前のアナリストのほぼ予想通りの前年同期比7.8%増となり、4-6月期の7.5%増から加速しました。これは主に7月に行われた鉄道などのインフラ支出増加や信用拡大の容認などの小規模な景気刺激策の効果と言えます。次に9月の中国の消費者物価指数が3.1%増と8月の2.6%増から大きく伸びたことも国内消費が回復にむかっていることを示唆しています。これにより14日は消費者関連株が急騰しています。

もっとも、消費者物価指数の上昇は金融緩和が出来なくなることにつながりますので、今後経済成長が伸び悩むとマイナス材料になりますので注意も必要です。ちなみに、中国当局は今後、7-9月期以上の成長ペースを維持することは難しいとコメントしており、引き続き経済成長率重視の戦略から質重視の戦略への方向転換を強く打ち出しています。11月に行われる中央委員会第3回全体会議(三中全会)の前のタイミングでこのようなコメントが出ると言うことは、三中全会ではインフラ投資の拡大など、景気刺激策的な内容は期待できないことが示唆されていると思います。ただ、一人っ子政策の見直しなど一部の企業にとっては大きくプラスとなるニュースが飛び出てくる可能性はありますので、引き続き三中全会を睨みながらの相場展開になると思われます。

コラム執筆:戸松信博