「トランプ・ラリー」前との違いとは?
2016年11月の米大統領選挙で、共和党のトランプ候補がまさかの勝利となる「まさトラ」が現実になると、主にトランプ候補の選挙公約であった大型減税への期待から米金利上昇、米国株高、米ドル高の「トランプ・ラリー」が起こった(図表1参照)。では、今回もトランプ大統領復活の可能性が高まるようなら、「トランプ・ラリー」の再現になるかと言えば、少し違うのではないか。
2016年に起きた「トランプ・ラリー」の背景
2016年11月の米大統領選挙以前は、6月にBrexit(英国のEU離脱)ショックで世界的な株価暴落が起こったことなどもあり、景気に対する悲観論が根強くくすぶっていた。そうした中で、米国株も冴えない展開が続いていた(図表2参照)。その上で、さらに「まさトラ」となれば、Brexitショックを上回る「トランプ・ショック」は不可避との見方が多かっただろう。ところが、実際には正反対の「トランプ・ラリー」となった。それはなぜだったのか。
注目されたのは米景気の回復だ。米実質GDP伸び率(前期比年率)は、2016年の第1、2四半期と1%台の低い伸びが続いていたが、第3四半期は3.5%へ急回復した。景気回復が続く中で株価暴落は起こりにくい。ところが、6月のBrexitショックの余韻もあり、マーケットは景気と株価への慎重論を引きずっていた。「まさトラ」でも「トランプ・ショック」が起こらなかったことで、「行き過ぎた悲観論」の反動が広がり、それが「トランプ・ラリー」が起こった背景と考えられた。
「ほぼトラ」が確実視される今回、2016年の「まさトラ」とは何が違うのか?
さて今回、「ほぼトランプ大統領復活が確実」という「ほぼトラ」となってきた中で、景気や株価を取り巻く状況が、上述の「まさトラ」とは大きく異なっている。言うまでもなく、主要な米国株価指数は軒並み最高値更新が続いている。この株価にとっての懸念材料の1つが高金利の長期化だろう。トランプ氏は、「行動が予測できない」点が特徴の1つではあるが、それでも前回同様に大型減税、対中関税引き上げという政策に向かう可能性が高まるなら、株式市場が期待する年内利下げの可能性は消えるだろう。それは株価「上がり過ぎ」の反動「トランプ・ショック」になる可能性はないだろうか。
「トランプ・ラリー」の再現か、それとも今度は「トランプ・ショック」の懸念もあるのか。それぞれのケースで、米ドルはどう反応するか。2017年からトランプ政権がスタートしても、しばらく米ドル/円は日米金利差と連動する展開が続いた。ところが、2017年末から、両者は逆方向に向かい始めた。これは、2017年12月のトランプ減税の議会成立後に起こった「悪い金利上昇」と呼ばれた現象だった。
「悪い金利上昇」と「良い金利上昇」の違いは、基本的に前者では株安、後者では株高になるということ。そしてこの場合、米ドルは基本的に金利ではなく株価への連動を強める傾向がある。以上を参考にすると、「トランプ・ラリー」で米金利上昇、株高なら米ドル高、「トランプ・ショック」で米金利上昇、株安なら米ドル安の可能性が高いのではないか。