モトリーフール米国本社 – 2024年6月25日 投稿記事より主なポイント

株価が低迷するテスラ[TSLA]、EVをめぐる2つの課題

現状、電気自動車(EV)メーカーのテスラ[TSLA]の株価が史上最高値から50%超も下落しているのは、一見不思議に思えます。なぜなら同社のEV販売台数は2023年に過去最高を記録しました。そして、現状は、生産台数も株価が400ドルを超えていた頃を上回っています。このような状況下で過去2年近くにわたって株価が低迷していることを考えると、生産実績は株価上昇の主なカタリストではないと考えられます。

テスラの株価が5年以内に2倍になるのに何が必要なのかを正しく理解するには、少し深掘りする必要がありそうです。そうすることで、同社が投資家に報いるために必要なものを持っているかどうかが明らかになるはずです。

現在のテスラと株価が過去最高値付近にあった頃のテスラとの最大の違いは、粗利益率です。2021年の粗利益率は30%前後で推移していましたが、現在は17%をわずかに上回る程度です。

粗利益率が急激に低下した理由は2つあります。1つは、金利上昇に伴う消費者需要の冷え込みを受けて販売価格を大幅に引き下げたため、利益率が低下したことです。

もう1つはコストの増加です。この2年間でテスラの費用は3倍近くに膨れ上がっており、その主な原因は売上原価の上昇です。

テスラはコストの改善を図っていますが、インフレがピークに達し、原材料価格と人件費が高騰した2021年と2022年に売上原価が急激に上昇した一方で、サプライチェーンは減速しました。しかし、状況は急速に改善しており、販売台数1台当たりの売上原価は6四半期連続で低下しています。

インフレが終息し、金利が低下し(EV需要は再び上向くと予想)、売上原価の改善が続けば、テスラの利益率は再び上昇するはずです。そうなれば、今後5年で株価が2倍になる可能性も高まってきます。ウォール街は重要指標として利益率に着目しています。

テスラの新たな成長ストーリーに必要な「自動運転」と「人型ロボットOptimus」

テスラの株価が2029年までに2倍になるというシナリオを後押しする、もう1つの要素があります。それは人工知能(AI)です。同社がAIにすべてを賭けているというのは言い過ぎかもしれませんが、まったくの見当違いでもありません。テスラ株が5年間で2倍になるという可能性を高めるには、同社は最先端技術への取り組みの少なくとも1つ、できればすべてを成功させる必要があります。

テスラは、スケジュール通りに物事が進まないことで有名で、これまでも度々、発売日を延期してきました。しかし、AI関連の取り組みの中で、実現する可能性が最も高いものが2つあります。自動運転と人型ロボット「Optimus」です。

EVにとどまらず、自動運転の実現はテスラにとって最大の焦点であり、それには理由があります。この課題を解決し、ドライバーの必要性をなくすことができれば、テスラはロボタクシサービスを開始する計画です。

イーロン・マスクCEOは、この事業に「ほぼ無限の需要がある」と見ており、中には、この事業でテスラの売上高は3倍を超える可能性があるとの予測もあります。完全自動運転はまだ実現していませんが、テスラは8月8日に自動運転技術に関する最新の進捗状況を発表する予定です。

Optimusに関しては、この1年間で大きな進展が見られ、テスラの工場で既に使われ始めています。マスクCEOは、Optimusが2025年に発売される予定で、すべてが計画通りに進めば、市場が成熟し、技術が進歩するにつれて最終的に年間1兆ドルの売上をもたらす可能性があると述べています。

テスラこそが未来のテクノロジーへの投資機会を提供する企業となるか?

テスラの目先の見通しは、いつになく不透明に感じられます。以前のような成功を収め、2029年までに株価を現在の2倍に押し上げるためには、EVの足場を固め直す必要があります。楽観的な見方をすれば、マクロ経済環境が改善し、EVの導入が進めば、状況は自然に良くなるかもしれません。しかし、それがいつになるかは分かりません。

AIの取り組みに関しては、ロボタクシーであれ、Optimusであれ、あるいはその両方であれ、テスラが計画通りに目標を達成できれば、株価は押し上げられ、5年間で2倍になる可能性も十分にあります。しかし、そのためには途方もない努力が必要です。

ロボタクシーや人型ロボットを動かすための基盤となるAIを生み出すのは、非常に困難なことです。幸いなことに、テスラは正しい方向に進んでいるようです。同社のスーパーコンピューター「Dojo」は、AIモデルの訓練に必要な計算能力を2024年だけで2倍超に増強させることに成功しました。

時間が経ってみないと分かりませんが、今後5年間でそれを実現するのに必要なものを備えている企業があるとしたら、そのうちの1つにテスラは入るでしょう。リスク許容度が高く、時間的余裕のある投資家であれば、未来のテクノロジーに投資する機会を提供してくれる企業は他にめったに見当たらないかもしれません。

免責事項と開示事項  記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。元記事の筆者RJ Fultonはテスラの株式を保有しています。モトリーフール米国本社はテスラの株式を保有し、推奨しています。モトリーフールは情報開示方針を定めています。