災害は激甚・広域化

7月になると、学生さんにとっては心躍る夏休みが始まります。海に山に、太陽の季節となりますが、同時にこの時期は夕立、豪雨、台風、雨の季節でもあります。

地球温暖化が進んだ影響か、近年、雨の降り方が変化し、狭い地域に短い時間で集中的に降る豪雨が、ずいぶん増えました。床上浸水などの水害は年々激甚化しており、そのような災害とは無縁だった地域にも被害が及んでいます。

今年も暑い夏が訪れる気配です。世界中で平均気温が年々上昇しており、そのせいで海面が熱せられて海水の温度が上がり、大量の雨を降らせる積乱雲が発達しやすくなっています。

「線状降水帯」という専門用語も、いつの間にか日常的な会話に浸透してきました。積乱雲が次々と連続して発生し、同じ場所に停滞、通過する状況です。ひとたび線状降水帯が発生すると短時間で記録的な雨が降りやすくなり、その地域に大規模な水害がもたらされます。

大雨による水の被害が相次いでいることを受けて、気象庁は、これまで使用してきた「防災気象情報」の注意喚起の再編を検討しています。

防災気象情報の再編も

最も危険な「特別警報」の次に、新たに「危険警報」を設け、その下に従来からの「警報」と「注意報」が続きます。2026年の運用開始を目指していますが、大雨による気象災害が頻発するようになった危機感がこのようなところにも表れています。

日ごろから自治体の作成するハザードマップをチェックして、近所のどのあたりに土砂崩れや河川流域の浸水被害が起こりやすいのか、豪雨による水害が起きる危険が迫ってきたらどこに避難すればよいのか、確認しておく習慣をつけたいものです。

最高益更新、高配当の4銘柄

ひとたび大規模な水害が発生すると、被害は上下水道にも及びます。本コラムでは上下水道に関わる水処理関連銘柄を取り上げてみます。

逆浸透膜・ろ過膜に強い東レ(3402)

総合化学メーカー。ナイロン、ポリエステル、アクリルの高機能繊維に始まって、炭素繊維や光学フィルム、半導体用の感光材などハイテク素材の世界的メーカーでもある。海水の淡水化や下水道水処理で欠かせない逆浸透膜、飲料水のろ過膜、それらのフィルムを用いて食品・飲料・製薬メーカーで多く用いられる処理装置まで1社で手がけ、いずれも世界トップ級のシェアを有する。今期は実質的な最高益更新を狙うまでに業績が急回復。

【図表1】東レ(3402)の週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2024年6月27日時点)

タクマ(6013)は下水プラント

ボイラーのタクマ、ごみ焼却炉のタクマとして知られるが、下水道処理プラントでも大きなシェアを持つ。これらの製品群を総合した「環境・エネルギー事業」を中核事業に据える。老朽化したごみ焼却炉、水処理施設のメンテナンスと更新需要で受注は年々増加。前期は人件費、原材料価格の上昇もあって増収・減益を余儀なくされたが、今期は早くも実質的に過去最高益に迫る高収益を取り戻す。2031年3月期に売上高2000億円を目指す。

【図表2】タクマ(6013)の週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2024年6月27日時点)

月島ホールディングス(6332)は配当性向50%

2023年に持株会社に移行。傘下に水処理を担う「月島JFEアクアソリューション」と産業機械を担う「月島機械」を有する。前者は1960年に上下水道分野に参入し、上下水道インフラの発展とともに成長してきた。浄水場、下水処理場のすべてにわたるプラント設計、製造、建設を担う。バイオマス、汚泥再生処理施設も手がけている。業績は回復基調にあり、PBR1倍回復を狙って配当性向を40%から50%に引き上げた。高利回り銘柄としても評価できる。

【図表3】月島ホールディングス(6332)の週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2024年6月27日時点)

多品種少量生産のイワキポンプ(6237)

化学薬品移送用のケミカルポンプをはじめ、流体制御機器のトップメーカー。上下水道の水処理用ポンプはもちろん、ボイラー、半導体のシリコンウエハー洗浄装置、液晶パネル製造プロセス、医療機器では人工透析装置など、「ポンプのデパート」と呼ばれるほどイワキポンプの製品は多品種少量生産、バリエーションは豊富である。原材料費、物流費の上昇で今期の業績拡大は一服するが、引き続き最高益更新を狙う位置にある。

【図表4】イワキポンプ(6237)の週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2024年6月27日時点)