「年初の羽田空港の航空機事故は能登の支援を妨害するための陰謀」「ハワイのマウイ島の火災はレーザー光線によるもの」といった根拠のないデマを聞くことが増えてきました。

以前から「アポロ計画は地上のセットで撮影したもので本当は月には行っていない」など荒唐無稽な話が流れてくることもありました。

意外なのは、最近少なからぬ人がこの手のデマを信じていることです。

デマが広がりやすい世の中へ

心理学の世界には、デマ情報の流通量は重要性と曖昧さの掛け算で決まるとされる「うわさの法則」というものがあります。多くの人が関心を寄せる重要なテーマであれば注目度が高まりやすく、ぼんやりとした情報であればあるほど広がりやすいというものです。

また、人は不安心理が高まると、デマを信じやすくなります。コロナ禍やロシアのウクライナ侵攻、パレスチナとイスラエルの問題など世界情勢が不安定になる中、気候変動やインフレといった問題もあり不安心理を高めています。

SNSや生成AIがフェイクニュースに拍車をかける

デマの拡散を加速させるのがSNSです。SNSの普及によって、大量の情報が個人間で相互発信されるようになり、「ノイズ」と呼ばれる不正確で誤った情報が正しい情報に混在する弊害が大きくなっています。

SNSでは過激でセンセーショナルな内容ほど拡散されやすいので、極端な内容であればあるほど広がりやすくなります。

また、最近は「インプレゾンビ」と呼ばれるインプレッション(閲覧回数)を増やして広告収入を得ることを目的に注目度の高い投稿に返信するアカウントも存在します。

さらに生成AIによって偽動画も簡単に作成できるようになりました。動画がリアルなものなのか合成によるフェイクなのかは見分けるのが難しくなり、誤った情報が広がってしまうことも珍しくありません。

米ドルが暴落するとは思えない理由

資産運用や経済に関する偽情報も増えています。こちらも恐怖感や危機感を煽るネガティブなものが多く、投資家であればつい気になってしまうものです。

例えば、1年以上前からグローバルサウスがロシアや中国と手を組んで米ドル決済を放棄し、これから米国ドルが急落するというデマをインフルエンサーが情報発信しているのをよく聞きます。

しかし、もし本当に米ドル決済を放棄する具体的な動きがあれば、為替レートはそれを織り込んで米ドルは既に下落を始めているはずです。

為替マーケットが反応しない情報を日本のインフルエンサーだけが知っているというのであれば、マーケットが気づかないうちに大量の米ドル売りを仕掛けているはずです。

天変地異を予想することはできない

最近では2025年東京に直下型地震が発生して首都圏が壊滅するため、東京の不動産は早めに売った方が良いのではないかと心配する投資家からの相談もありました。

東京でも直下型地震が発生するのではないかという不安を持っている投資家は少なくありません。

とはいえ、本当に2025年に地震が発生するという科学的な根拠があるなら、専門家の警告を受けて日本政府も何らかの対応に乗り出すはずです。地震研究者たちが気づかない秘密の地震予想の方法があるというのでしょうか?

少なくとも現在の科学技術では地震の発生を事前にピンポイントに当てることはできないというのが常識です。

米ドルの暴落や首都圏直下型地震の予想は、冷静に考えてみれば占いと同じレベルのフェイクニュースであることは明らかです。

デマと事実を見分けるために必要なこと

もちろん、これから米ドルが下落することや、地震が起こることはあるかもしれません。しかし、それは予想が的中したのではなく、ずっと言っていた悪い予想がたまたま当たっただけのことです。

「止まった時計(=1日に2回だけは正しい時を刻む)」と同じです。

そのようなフェイクニュースに翻弄されないためには、その情報の発信源となった一次情報にアクセスすることです。信頼できない情報源からのいい加減な情報は、伝達される中でより過激な内容になって、不正確な情報が拡散されるのはよくあることです。

また、1人の言うことを鵜呑みにするのではなく、セカンドオピニオン、サードオピニオンを集めれば別の視点が見えてきます。

将来に対する不安は不透明感が高まると、過激で悲観的なフェイクニュースに翻弄される人が増えてきます。そうならないために、平時から自分なりの情報収集法とメンタルの対処法をしっかり考えておきましょう。