2024年6月12日(水)8:50発表
日本 企業物価指数2024年5月速報
【1】結果:企業物価は市場予想を上回る、輸入物価は円安の影響が継続
2024年5月の企業物価指数は、前年比・前月比ともに市場予想を上回る結果となりました。前回4月の結果と比べると、前年比では1.3%ポイント上昇しており、8ヶ月ぶりの2%台の結果となりました。グラフからは緩やかに上昇していることが見て取れます(図表1)。
輸入物価指数は円ベースで、前回4月から前月比、前年比ともに小幅に上昇しています。同月の米ドル円レートも152円から157円のレンジで、150円台後半で推移する場面が多く、円安の影響が継続していることがうかがえます。契約通貨ベースでは、14ヶ月連続の前年比マイナスで推移していますが、少しずつマイナス幅を縮小しています(図表2)。輸出物価指数は円ベースで前回4月から横ばいで前年比10%台と高水準で推移しています。
【2】内容・注目点:電力関連の上昇が企業物価を押し上げ
企業物価の上昇に寄与したのは、電力・都市ガス・水道といったエネルギー関連と銅などの非鉄金属でした。エネルギー関連は、5月から再生可能エネルギー発電促進賦課金の単価が上昇したことや、電気・ガス価格激変緩和対策事業の値引き幅が縮小したことが負担になり、指数を押し上げました。また銅価格は需給要因で価格が上昇していることが原因と考えられます。
電気・ガス価格激変緩和対策事業は先月5月にて値引きが終了していることから、今後は今回以上の企業物価上昇圧力となるでしょう。電力などの波及元とされる石油・石炭・天然ガス(輸入物価、契約通貨ベース)の推移を見てみると、前月比ベースで6ヶ月ぶりにプラスに転換しています。前年比ベースでは、5月はマイナス8.2%と依然マイナス推移をしていますが上昇トレンドが続けば、当然電気ガスなどにも影響し、物価上昇に大きく寄与する可能性が考えられます。
足元の状況ではエネルギー価格は、直近でOPECによる減産規模の縮小のニュースがあり、原油価格の下押し圧力がかかっており、トレンドは横ばいになると考えています。
【3】所感:川下の財への波及はラグ、決定会合の物価見通しは上昇を予想
企業物価も2%に回帰する結果となりました。財への転嫁は川上(ID-1)にて少しずつ上昇が確認できますが、以降の財は横ばい傾向にあります。川下・最終需要の財まで影響が出てくるには時間がかかるものとされ、消費者物価への転嫁も時間をかけて波及されていくものと考えられます。
足元の円ベースでの輸入物価の上昇、またそれが時間をもって消費者物価に波及するコンセンサスから、今週後半に開催される日銀の金融政策決定会合にて、政策委員の物価見通し(とりわけ2025年度など波及が確認できる時期)の上昇可能性があると言えるでしょう。
マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 山口 慧太