2024年5月10日(金)8:50発表
日本 2024年の国際収支状況(速報)

【1】結果:経常収支は+8000億円で黒字幅拡大

貿易・サービス収支 +5584億円(調査無)
第一次所得収支 +3兆4447億円(調査無)
第二次所得収支 -6043億円(調査無)
経常収支 +3兆3988億円 (+3兆4546億円)
(カッコ内はBloomberg集計による市場予想、中央値)

2024年3月の経常収支速報値は貿易収支とサービス収支の黒字化に伴い2月の2.6兆円から、約8000億円黒字幅を拡大しました。貿易収支では、輸出が前年同月比+6.5%増加したことが主因です。

サービス収支についても、インバウンド需要の拡大を背景に旅行収支が堅調であることから+674億円と前回-556億円から黒字転換し、経常収支を押し上げました。第1次所得収支については、証券投資収益が拡大したことから前月比+4%上昇しています。

【図表1】経常収支の推移(単位:億円)
出所:Bloombergよりマネックス証券作成

【2】内容・注目点:貿易収支・サービス収支が黒字転換

2024年3月速報値ベースでの経常収支は、黒字幅を拡大する結果となりました。貿易収支について、輸出の面では自動車(前年同月比+994億円、同+7.1%)や半導体等電子部品(同+522億円、同+11.3%)が増加し、生産・出荷の拡大が黒字に寄与しました。輸入金額は、2ヶ月ぶりの減少となりました。石炭や液化天然ガスの輸入が金額・数量ともに減少し、輸入金額の減少に繋がりました。

サービス収支については、3月の訪日外国人旅行者数が初の300万人を超えるなど、旺盛なインバウンド需要によって旅行収支がプラスで推移しています。今回、3月の結果はサービス赤字サイドの縮小(通信・コンピューター・情報サービスや研究開発費)が図表2から見てもわかります。

いわゆるデジタル赤字(海外企業のデジタルサービスの利用によってデジタル関連収支が赤字化すること)の縮小が見て取れますが、2023年の3月のデータも同様に縮小していることもあり、季節要因での縮小であることが考えられます。

【図表2】サービス収支の内訳・推移(単位:億円)
出所:Bloombergよりマネックス証券作成

【3】所感:サービス収支の黒字継続がカギ

今回の結果では、貿易収支が2021年7月以来の水準で黒字転換となりました。上記のとおり輸入サイドの縮小もありますが、輸出の増加が好材料と言えるでしょう。自動車は工場の再開があり、稼働停止分の挽回生産をしていくと考えられるため、今後の輸出増に寄与すると考えられます。

サービス収支については、3月の訪日外国人旅行者数が初の300万人を超え、今後も堅調に推移していくものと考えられます(旅行収支は2023年12月の4363億円がピークで、その際の訪日外国人旅行者数は273万人でした)。

一方で、デジタル赤字はクラウドやウェブ広告など海外のサービス利用によって、中長期的にも拡大していくことが想定され、今後の展開としては、経常赤字で推移する可能性が高いと考えられます。

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 山口 慧太