先週末ジェファーソンFRB副議長が行った講演のタイトルです。This time is different(今回は違う)という言葉はマーケットでは良く知られています。そのような楽観が、バブルとその崩壊という過ちを何度も繰り返してきた要因として指摘され、書籍のタイトルにもなっています。講演ではYes, but every time is differentとされました。いつだって今回は違うという事です。

過去に起きた危機的な出来事には、それに対処することで今の経済が形成されていることから、現況には過去からの結びつきがあると言えます。それでもこの世界では前例のない出来事が常に起きています。よって過去の出来事を十分に研究し、それを未来への指針とする際には、過度に信頼することは過ちの原因となりかねません。

金融政策は以前の同じ局面と比較されがちですが、資本・労働・生産性の違いを考えると全く同じ経済状況という事は想定しづらく、〇〇年の状況を参考に、という考えはリスクを伴います。これは金融資産の値動きに関してもいえることです。

過去の大きなイベントも発生当時は類をみない出来事であったことでしょう。それは今後も前例のある出来事が繰り返されると思うべきではないという教訓になります。未来は過去と同じようにはならない、と意識することは重要です。過去から未来を予測するのは難しく、ただいつでも(良くも悪くも)未経験の事態に遭遇しうるということです。テクノロジーを含め世界は変化しているので将来はサプライズに満ちているとの心構えが必要です。

景気は通常景気の過熱→物価上昇→利上げ→景気鈍化→物価鈍化→利下げ、というサイクルとなりますが、コロナ禍以降の特殊な物価上昇や政策発動による景気浮揚、構造変化など前例の無い要因によって、これまでにないペースでの利上げでも景気は堅調さを維持しています。いつも通り「今回は違う」わけです。

副議長の講演では、予期せぬショックはいつも起こりうる中で政策担当者は用心と俊敏性を持たねばならない、とされました。株式市場が高値を付ける今だからこそ、リスクへの目配りが大切で、資産運用においても分散投資という用心が必要です。