あれよあれよという間に日経平均は史上最高値に肉薄してきました。2023年12月のコラムで「2024年は史上最高値を狙う1年」と位置付けましたが、早くもそれが実現してしまったというところでしょうか。

長く証券業界に携わってきた身としては、最高値更新が時間の問題となってきたことに感慨深いものを感じています。売買代金も膨らんできており、利食い売りをこなしての上昇はまさに力強い相場付きと言えるでしょう。

このような上昇相場を目の当たりにして、今後は「持たないリスク」を感じた投資家がさらに参入してくる可能性も増してきたと考えます。新たな買い手が入ってくることで好循環が成立となれば、まだしばらくは強気相場が続くと期待できるではないでしょうか。

ただし、これは前回のコラムでも解説しましたが、強気の時ほどリスクへの備えもまた重要になってきます。「何かおかしなことはないか」というアンテナは、急騰に浮かれることなく、しっかり張っておきたいところです。

進むインフラ老朽化、高まる強靭化へのニーズ

さて、今回は「インフラ設備の老朽化」をテーマに採り上げてみたいと思います。日経平均が34年間ずっと調整している間に、それまでうまく回っていた様々な物事にも綻びが生じることとなりました。社会保証制度然り、今回取り上げるインフラ設備然り、です。このテーマを採り上げたのは、日経平均が高値を更新して未体験ゾーンに入ろうかという時代感の中、このような「過去の清算」もまた今後は注目されてくるのではないかと考えたためです。

読者の皆さんはよくご存知の通り、我々の生活基盤を支えるインフラは老朽化が進んでいます。現在のインフラは1950~1970年の高度成長期に一気に整備・普及されたものがベースになっており、それから半世紀を経て経年劣化や現在のニーズとの不適合などが顕在化している状況なのです。

さらに、東日本大震災以降に頻発する日本各地での自然災害の発生に備え、インフラ強靭化のニーズも高まってきています。今コラムでは、現在置かれている日本のインフラ状況をおさらいした上で、どのような企業群にビジネス機会があると思えるのか、を考えてみたいと思います。

現状、日本のインフラはどうなっているのか?「交通」と「水道」に注目

まずは、現状のおさらいです。ここではその核となるインフラとして交通と水道に注目してみましょう。交通では道路、トンネル、橋梁がその主体を担います。道路交通面で見ると、重要な交通網を形成する高規格道路(高速道路などの自動車専用道路)のうち、首都、東名、名神などの主要高速道路はいずれも1960年代に設置され、すでに60年近い歴史を刻んでいます。トンネルは全国に約1.1万本ありますが、そのうち22%は建設後50年以上が経過しました。国交省によると、2030年にはこれが36%まで上昇する見通しとなっています。

橋梁はもっと深刻です。2021年時点で日本には73万の橋があるとされていますが、このうち、建設後50年を計画した橋梁の割合はその32%にも達します。国交省は2031年には57%まで急上昇すると予測しており、やはり3割くらいある建設年次不明の橋梁も併せて考えれば、老朽化はもっと早くに進行する可能性もあるのです。

実際のところ、安全性の問題から通行が規制されている橋梁数は急速に増加しているとの指摘もあります。こちらはコトがあると大事故にも繋がりかねず、災害時には流通における致命的なボトルネックにもなりかねません。今後更新・補強などが喫緊の課題になってくるのではないかと予想します。

水道はどうでしょうか。下水道においては、2021年時点の下水道管渠は総延長距離ベースで約49万キロ存在していますが(国交省)、このうち標準耐用年数の50年を経過したものは6%と、まだ限定的な規模に留まっています。

とはいえ、国内にある下水処理場は既におよそ90%が機械・電気設備で耐用年数を経過しているとの報告もあり、下水道管渠の老朽化比率も2031年には18%、2041年には40%へと加速度的な上昇が予測されています。

水道管も同様です。厚労省によると、全国の水道管路の総延長約73万kmのうち、法定耐用年数を超えた管路は、2019年度時点で19%にも到達しています。一方で、管路更新率は低下傾向にあり、今ある管路を全て更新するには現状のペースでは130年も要するという試算もなされています。水道の領域では上下水道ともに老朽化はこれからが深刻な問題になる見通しとなっています。

投資視点で注目したい、インフラ関連上場企業

では、株式投資という観点ではどのような上場企業が注目できるでしょうか。老朽化対応は補修や更新が必須となります。国や自治体、公団などがどれだけの予算を計上できるかは不明ながら、補修・更新のピッチは今後加速していくことでしょう。当然、それらに携わる企業群が注目対象になると考えます。

具体的には、交通領域においては、スーパーゼネコン(清水建設(1803)、大成建設(1801)、大林組(1802)、鹿島建設(1812))や準大手ゼネコンのうち土木売上の比較的高い戸田建設(1860)、熊谷組(1861)、三井住友建設(1821)、西松建設(1820)、安藤・間(1719)、五洋建設(1893)などが挙げられます。加えて、プレストレスト・コンクリート(PC)橋梁領域で大手とされるオリエンタル白石(1786)、ピーエス三菱(1871)、富士ピー・エス(1848)なども関連企業と言えるでしょう。

一方で、上下水道関連では、管路として鉄製とプラスチック製が使用されており、鉄製の鋳鉄管ではクボタ(6326)、栗本鐵工所(5602)、日本鋳鉄管(5612)がその主要プレーヤーとなります。プラスチック製では塩化ビニル管、ポリエチレン(PE)管が主に使用されていますが、積水化学工業(4204)、旭有機材(4216)、前澤化成工業(7925)などの存在感が中でも高いと言えるのではないかと考えます。

ただし、ここで紹介した企業は交通・水道関連の専業企業ばかりではありません。全社業績におけるインパクトの多寡については、四季報の売上内訳や各企業のWebサイトなどで確認しておく作業も忘れないようにしたいところです。