株式市場は依然として揉み合いが続いています。日経平均は、おおよそ30,500円~33,000円のボックス圏というところでしょうか。前回のコラムでは、この下限がどれだけ岩盤かが問われると解説しましたが、直近は米金利の上昇打ち止め観測の台頭から、むしろこの上限を試す動きとなっています。

それでも一気にレンジを抜けないのは、中国景気の下押し圧力や国内でも依然として種々の景気指標がまだら模様だからでしょう。まだ当面はこういった一進一退の状況が続くのではないか、と予想しています。

米国の景気動向を左右するブラックフライデー

さて、今回は動向がとても気になる「ブラックフライデー」を再び採り上げてみましょう。このテーマを採り上げるのは2019年秋に公開したコラム以来、4年ぶりということになります。

ブラックフライデーとは米国で年末商戦が慣例的に始まる11月の第4金曜日を意味し、この日前後の売上は米国の景気動向が反映されると認識されています。勤労感謝の日前後になります。

以前のコラムでこのテーマを採り上げた時は、米国景気の先行観測に加え、オンライン小売がどれだけその存在感を高めるのかということが焦点でした。この時は「攻めるオンライン、守る実店舗」という構造の中、オンラインが実店舗にどれだけ迫ることになるのかが問われていたのです。

その後はコロナ禍に伴う外出自粛もあってオンラインを通しての消費が急伸することとなりましたが、かといって実店舗が駆逐されることはなく、リアルな体験型小売りとして引き続き主流の地位を維持しています。

2023年のブラックフライデー、米国の消費意欲が株価動向の追い風に

では、2023年のブラックフライデーの注目ポイントは何になるでしょうか。まずは米国の消費意欲の確認です。

米国はコロナ禍で発生した過剰流動性を後始末すべく急ピッチで金利を引上げてきていますが、依然として景気は堅調なものがあります。それが世界的に株価を下支えているということでもあるのですが、一方で燻る金利上昇圧力は株価の強烈な重石ともなっている状況です(直近の米金利上昇打ち止め観測から日米で株価が大きく反発したのはその好例でしょう)。

ブラックフライデーの動向は米国の消費力が実際どのくらい強いのかを見極める非常に重要なデータポイントとなるのです。売上が予想以上に強いとなれば、景気の強さへの評価よりも金利上昇懸念の再台頭が株価に影響を与える可能性があります。逆に、思った以上に消費が鈍ければ、金利上昇懸念は雲散霧消し、(景気減速が示唆される中ながら)むしろ株価には追い風という構図も成立するかもしれません。

オンライン経由の売上動向もポイント。実店舗との連携も時代に合った形へ

次に注目されるのは、やはりオンライン経由での売上動向でしょう。実は2021年のブラックフライデーから、オンライン経由の売上はそれまでの2ケタ成長から打って変わって数%の伸びにとどまっているとの分析がなされています。

コロナ禍がオンライン売上を一気に加速させたのですが、コロナ禍終結と前後してその伸びには失速が見られるのです。2023年のブラックフライデーにおいて、この傾向がより顕著なものとなるのか、反転して再び増加ピッチが加速するのか、それを是非とも見極めたいところです。

それとは対照的に、実店舗売上は快走しています。外出制限がなくなり、消費者は「欲しいものは(自宅に送り届けられるまで待つのではなく)今、欲しい」と考えるようになった上、「画面越しではなく、実際にモノを見て決めたい」というシンプルで根本的なニーズはやはり根強いということなのでしょう。オンライン消費は確かに便利なのですが、そこにわざわざ足を運ぶという「一見無駄に見えるような行動」を排除できるほど人間は効率的なものではないということかもしれません。

それはまた、実店舗を擁する小売店が生き残りをかけて構造改革を進めた結果でもあるのです。「今欲しい」「見て確かめたい」という欲求とオンラインの利便性を両立する「ネットで注文し、実店舗でピックアップする」というBOPIS(Buy Online Pick-up In Store)という仕組みが導入され、これが実店舗の売上を牽引することになっているのです。

オールドファッションな実店舗型の小売りも、時代に合わせてしっかりと変革してきていることがわかります。2023年のブラックフライデーの結果次第では、オンラインと実店舗は「パイの取り合い」のフェーズから棲み分けが進む段階への変化が示唆されることになるのかもしれません。

ブラックフライデーが日本に与える影響とは。小売業態の日本株の動きにも注目

では、ブラックフライデーの動向は日本企業にどのような影響を与えるのでしょうか。当然、米国景気に連動する「グローバル型の景気敏感株」はその代表格となるでしょう。自動車や素材、エネルギーといった産業などが挙げられます。米国のブラックフライデーとの連動性は希薄ですが、国内歳末商戦という観点からは国内百貨店業界も要注目でしょう。

他方、小売業態の構造変化という観点においては、米国の流れが国内にも波及・浸透するかどうかが気になるポイントとなります。

その渦中にある企業群としては、実店舗型の総合小売ではセブン&アイ・ホールディングス(3382)やイオン(8267)が、オンライン急伸局面でも際立った個性で売上を増加させてきた神戸物産(3038)やパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(7532)などが、専門店ではファーストリテイリング(9983)、ヤマダホールディングス(9831)などが、オンライン小売では楽天グループ(4755)などが、その代表格と言えるでしょう。