直近のJ-REIT価格動向

直近1ヶ月(9月28日~10月25日)のJ-REIT価格は辛うじて大台割れを回避している状態が続いている。東証REIT指数は9月5日の1,918ポイントから10月4日の1,806ポイントまで下落基調が続いたが、その後は1,800ポイントから1,840ポイントのボックス圏で推移している。

米国10年債利回りが5%を超え、日本の10年債も上昇基調が続く中で、利回り商品のJ-REITは価格面では「健闘」していると言えるだろう。その背景には、世界で不動産投資が急減する中で、日本での不動産投資額が急増していることが挙げられる。各国が大幅利上げを行っているため、不動産投資に必須とも言えるレバレッジ効果が期待できる不動産市場が先進国では日本だけとも言える状態になっているためだ。

つまり、J-REITによる物件売却益の計上が当面期待できると考えている投資家が一定数存在するため、J-REIT価格は底割れを回避できていると考えられる。

ホテル取得が急増する要因と注意点とは

J-REITでは、ホテルの取得が急速に回復している。これはアウトバウンドの減少とインバウンドの増加の両面でホテル宿泊需要が高いという面に支えられている。

まず、アウトバウンドの減少であるが、円安や海外物価の急騰により、海外旅行需要が減少しているためだ。2023年第3四半期(1月~9月)のアウトバウンドはコロナ禍前の2019年比55%を超える減少(※)となっている、

次に、円安による日本物価の安さにより、インバウンドの回復は顕著になっている。2023年第3四半期でインバウンドは2019年比29%弱の減少となっているが、特に9月は3.9%の減少と2019年の水準をほぼ回復した状態と言えるだろう。

さらに2018年、2019年と日本のインバウンドを支えていた中国人の減少が続いている中で、2023年9月は2019年と同様の水準まで回復している。中国人のインバウンドは9月単月で2019年比60%減。2023年第3四半期で78%減と急減している中でインバウンドが回復している。すなわち、過去最高を記録した2019年と比較してインバウンドの多様化が進んでいる。

宿泊需要が高くなっていることに加え、ホテルは投資地域が広く、比較的高い利回りで物件取得が可能な点もJ-REITのホテル取得が増加する要因となっている。8月は675億円、9月は757億円増加し、9月末におけるホテルの資産残高は1兆8446億円となり、J-REIT全体におけるホテルの投資比率が7月末の7.6%から、9月末は8.2%へ急拡大している。

ホテル特化型銘柄だけでなく、総合複合型銘柄もホテルの投資割合を高めている。また住宅を主体とする日本アコモデーションファンド投資法人(3226)も、ホテルを取得しポートフォリオの分散を図っている。

一方で、ホテルは運営型不動産とも言われ、運営体制の巧拙が収益に影響を及ぼしやすい資産とも言える。物件の立地だけでなく、ホテル運営の人手不足解消の決め手も少ないため、効率的な運営を行うホテル運営会社を選ぶという、通常の不動産とは異なる選択も必要な資産となっている。

前回のコラムでも解説したが、鑑定評価は宿泊需要が前述のように回復している中で40%も下落する資産でもある。従って、ホテル特化型銘柄以外がホテルを取得している場合には、投資家として注意が必要と考えるべきだろう。

(※)日本政府観光局公表資料による。以下インバウンドの増減も同様