先週の上海総合指数と深セン総合指数は上昇。短期的には5月2日(木)が底となり、緩やかな上昇局面が続く可能性が出てきました。株価が堅調な背景となっているのは外国人投資家の資金流入期待です。中国人民銀行は先々週に外国人投資家による元建て株式投資の指針を発表したことから、中国の地元新聞が人民元適格海外機関投資家(RQFII)の投資枠付与をまもなく開始するとの報道を行い、それが材料となりました。これをきっかけに、先進国の金融緩和によって余剰している投資資金が、株価が出遅れて割安となっている中国株に流入してくるのではないかとの期待感が高まっているわけです。

一方、中国の経済統計はどちらかといえば余り良くない数字が続いています。まず、月初にHSBCが発表した中国製造業景況指数(PMI)の4月確報値は50.4と、3月の51.6から低下。また、国家統計局が発表する4月の公式製造業景況指数(PMI)も50.6となり、3月の50.9から低下しています。これらは中国の経済成長が鈍化していることを意味します。そして、5月9日に発表された4月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比2.4%の上昇となり、3月の2.1%から加速しており、金融緩和への期待が遠のきました。次に、4月の貿易収支ですが、3月の小幅赤字から一転、156億ドルを上回る黒字に転換しました。しかし、これは前述のPMIの推移などと逆行する数字となっており、中国の資本規制をかいくぐって中国に投機資金を持ち込もうとする違法資金流入の動きなのではないかとみるエコノミストもいます。

香港株式市場は強い基調の推移が続いています。最高値を更新し続ける米国株など、好調な海外市況の影響を受け、割安であり、上海株式市場や深セン株式市場と異なり、海外からの資金流入が容易な香港株式市場に注目が集まっている格好です。いずれにせよ、世界的に見て、中国以外の国々では金融緩和が続いており、流動性は高まり続けています。中国政府はその余剰資金の流入によるインフレを警戒し、早目に緩和気味の金融政策を中立に戻したわけですが、中国経済のスローダウンは資源価格の下落につながり、世界のインフレ懸念を後退させており、先進国の金融緩和を許容する結果となり、その溢れかえった資金が徐々に中国株や中国経済に流入してきている状況が現在の状況であると思います。

コラム執筆:戸松信博