日経平均株価は少しずつ上げ足を速め、33年ぶりとなった年初来高値の水準に再び挑戦するに至っています。中国の景気失速リスク台頭や米国の金利上昇圧力再燃など不安要因は多いものの、グローバルで見ると相対的に悪材料の少ない日本市場への関心が高まっている印象です。

となると、当面の最大の関心事は年初来高値を更新できるのかどうかになるでしょう。上昇基調に弾みをつけることができれば、安心感が高まり、さらなる新規マネー獲得に繋がるという好循環に入るように思えるためです。あるいは、ここで再び調整局面に入ってしまうのか。相場の勢いが問われる局面に差し掛かってきたと受け止めています。

コロナ禍以降、外食産業は着実に回復傾向へ

さて、今回は「外食」をテーマに採り上げてみましょう。コロナ禍対応が5類相当に移管した春より、全国各地で人流が大きく改善しているのはご存知の通りです。それに併せ、今回は最も身近に人流回復を感じることのできる外食に焦点を当て、今後の投資戦略を考えてみたいと思います。

日本フードサービス協会(※)の調べによると、外食売上は2023年7月時点では20ヶ月連続で前年の水準を上回り、コロナ禍の混乱からは着実に回復している様子が確認できます。コロナ禍前の2019年実績との比較でも、2022年10月にその水準を超えて以降はプラス基調を維持しています。データを見る限り、コロナの影響は既に過去のものになったということができるでしょう。

なお、日本フードサービス協会の調査対象は約3.7万店舗と、日本全国の飲食店営業店舗数約145万店舗(厚労省データ)に占める割合は数パーセントに過ぎません。しかし、大きな傾向はこれによって十分把握できるものと考えています。

業態別に温度差のある外食産業。回復が株価に反映されている上場企業とは

その日本フードサービス協会の調査において注目すべきは、業態別にかなりの温度差があることです。例えば、ファストフードの売上はコロナ前の水準を既に2割以上クリアしている一方、パブや居酒屋の売上はまだコロナ前の水準から3割程度も下回ったままの状況にあるのです。

ファストフードの伸長は内食が続いた日々から、お手軽な外食といった流れに沿ったものと考えられるでしょう。実際、ファストフードの上場企業では、ゼンショーホールディングス(7550)、日本マクドナルドホールディングス(2702)、吉野家ホールディングス(9861)、松屋フーズホールディングス(9887)、日本KFCホールディングス(9873)などが挙げられますが、直近1年の株価は堅調な推移にあります。これらはファンダメンタルズの回復が株価にも反映されてきていると言えるのかもしれません。

一方、パブや居酒屋の苦戦はリモートワークの浸透や会社における「飲みニケーション」機会の減少がその背景にあるのではと想像しています。コロナ禍は過去のものとはなったものの、ライフスタイルなどには「不可逆的な」影響も残したということでしょう。

最近はリモートワークの弊害も指摘され始めており、「飲みニケーション」も徐々に復権する可能性はあると考えますが、やはりかつてとは異なる形での復活になるのではないかと想像しています。

株式投資という観点では、ほぼ悪材料が出尽くしたように思えるパブ・居酒屋の方に投資妙味を感じますが、復活・回復がどういった形になるのかによって、かなり銘柄間で復活の度合いに差が生じてくる可能性は否めません。今後はどのような外食スタイルが主流になってくるのか。身近なことでもありますし、予想してみるのも楽しいのではないでしょうか。

投資妙味のある外食銘柄を選別するための2つの基準

今後の外食産業を予想する1つのヒントとして、世界的な食材価格の高騰があります。外食産業において食材価格の高騰は強烈な原価高に直結します。それでも利益を捻出するためにはある程度の値上げを含む、顧客単価の引上げが必須になってくることでしょう。

これは、ご自身が参加される外食機会にどこまでの金額を払えると感じるか、この食事やお店の雰囲気ならば、少々値が張っても再訪したいと思うのかどうかが見極めポイントになるということです。この肌感覚は非常に重要です。このようなカテゴリーに当てはまる上場会社は決して多くはありませんが、銘柄選択をするうえでの1つの見方になるのでは、と考えます。

次にインバウンド需要も無視できないファクターでしょう。既にオーバーツーリズムが懸念されるほど訪日外国人が急増しています。かつての訪日客は爆買いに代表されるような「モノ」への関心が高かったのですが、コロナ禍後は日本での体験「コト」を重視する傾向が高まっているように感じています。

その「コト」を代表するのが食事です。寿司や天ぷらといった馴染みのある日本食のみならず、ラーメンやお好み焼き、焼き鳥、しゃぶしゃぶなどの人気も高く、全国各地の外食レストランでそれらに舌鼓を打つ訪日客を見ることも珍しくなくなってきました。このような需要の取込みシナリオもまた、銘柄選別の1つの基準になるのではないでしょうか。ぜひ、外食機会にはそういった視点で店内を見渡し、メニューを眺めてみてください。思いもかけない外食銘柄を発見することになるかもしれません。

(※)一般社団法人日本フードサービス協会 外食産業市場動向調査 2023年7月度 結果報告
http://www.jfnet.or.jp/files/getujidata-2023-07.pdf