先々週末に鳥インフルエンザ「H7N9型」感染拡大懸念で急落した香港株式市場ですが、先週は反発しました。理由は2つあります。まず1つは鳥インフルエンザ「H7N9型」に関して市場の目が冷静になったことです。2003年に感染者数が拡大して相場急落の引き金になったSARS(重症急性呼吸器症候群)が人から人への感染があったのに比べ、今回の鳥インフルエンザ「H7N9型」は人から人への感染が確認されていないため、SARSの時のような酷い状況にならないだろうとの認識が拡がりました。

2つめの理由は中国の3月のCPI(消費者物価指数)が、2月の前年同月比3.2%増や市場予想の2.5%増を下回り、2.1%増で着地したことです。これにより中国の金融政策が更なる引き締めには振れないだろうとの安心感が拡がりました。3月のCPIが予想よりも良かった要因ですが、天候がよかったことや新政府が展開している反贅沢・反汚職キャンペーンによって食料品価格の上昇率が2月の6.0%増から3月は2.7%増に鈍化したことなどが効いています。ちなみに同時に発表された、PPI(生産者物価指数)は2月1.6%減からさらにマイナス幅が大きくなり、3月は1.9%減となっています。PPIはCPIの先行指標の1つですので、こちらも安心感が拡がる要因の1つとなっています。

一方、「清明節」で4月4日(木)と5日(金)が休場となっていた上海証券取引所と深セン証券取引所の株価の値動きは連休明けの4月8日(月)は鳥インフルエンザの影響で下落したものの、その後反発。しかし、3月の中国の貿易収支が予想外の赤字であったことや3月の元建て新規融資が1兆0600億元へと2月の6,200億元から急増したことが(ちなみに市場予想は9,400億元でした)、金融引き締めの前兆であるとの懸念につながったことから週末は値を下げて終わりました。これにより香港株も週後半は上値の思い展開となりました。特に3月の融資急増は、中国の金融引き締めの懸念が行き過ぎであったことを示す一方で、中国政府の指導に必ずしも従わない多種多様な金融機関が中国で増えたことを意味しています。つまり、今後、一段の引き締め寄りの金融政策が講じられる可能性があり、注意が必要です。

コラム執筆:戸松信博