自分でポートフォリオを組むか投資信託を選ぶか、最適なのは?

親の介護が必要になったとき、次のどちらかを選択しなければなりません。

・住み慣れた自宅で介護をする在宅介護
・施設に預けて介護を託す施設介護

この2つの介護を投資で例えるなら、「在宅介護」は自分で投資先を選んでポートフォリオを組むようなものであり、「施設介護」は投資のプロに運用を任せる投資信託のようなものになります。

在宅介護と施設介護、どちらを選ぶべきかを一緒に考えてみましょう。

類似点の多い「在宅介護のケアプラン作成」と投資のポートフォリオ作成

私は認知症の母を10年以上、自宅で介護しています。施設に預けなかったのは、母が最期まで住み慣れた自宅で過ごしたいと言い、私もそれに賛同したからです。

自宅で介護しているといっても、私自身が母を1日中見ているわけではありません。65歳以上の高齢者で介護が必要と判断されれば、誰もが受けられる公的な介護保険サービスの力を借りています。

具体的には、母の食事の準備や掃除、洗濯などをヘルパーさんにお願いしています。また、通いのデイサービスでは食事の提供や入浴の介助、他の利用者さんとの交流があり、私の介護負荷は軽減されています。

こうした介護保険サービスの利用は、母が自宅で生活していくために必要なものです。介護のプロである地域包括支援センターやケアマネジャーと相談しながら、最適なサービスの組み合わせを考えます。これをケアプランの作成と言います。

どのようなケアプランにするかについては、プロから提案がありますが、最終的な判断はサービスを利用する親や家族の意思が尊重されます。

投資に例えると、国内株式の割合を増やそうとか、債券を増やして安定した運用を目指そうとか、投資方針に合わせたポートフォリオを自分で組む場合があります。このプロセスが、ケアプランの作成と似ています。

ポートフォリオは自分の資産状況や将来設計に合わせて、何度も見直しを行いますが、ケアプランも同様です。親の健康状態や家族の生活環境に応じて見直します。

種類が多くて悩む「介護施設」選びは投資信託と似ている

一方、施設介護は親にどの施設に入ってもらうべきかを、比較サイトで検討したり、実際に見学に行ったりして決めます。施設を選んだ後は、介護のプロに親の生活のすべてを見てもらうようになります。

施設の種類は、公的な施設である特別養護老人ホームをはじめ、民間の有料老人ホーム、認知症の人が多く利用するグループホームなど様々で、初期費用や月々の費用、経営方針やスタッフの質も異なるため、施設選びは簡単ではありません。

こうした施設選びは、投資信託を選ぶプロセスと似ています。国内中心で運用するのか、新興国への投資を多くするのか、インデックス運用かアクティブ運用かなど、種類が多くどれを選べばいいか迷う点が似ているうえ、プロに託すという点でも同じです。

これら2つの話を踏まえて、在宅介護と施設介護、どちらを選べばいいかを深堀りしていきましょう。

介護も投資も最終的な判断は自分で行う

介護のことがよく分からない「素人」の家族が親の介護をするよりも、プロに頼ったほうが安心という理由で施設介護を選ぶ人がいます。投資の世界でも、投資初心者はプロが運用する投資信託を購入したほうが良いとよく言われます。

しかし、どんなにプロの力を借りたとしても、最終的な判断は自分がやらなければなりません。親の体調が急に悪くなり、医療的な処置が必要になった場合に、親の判断能力が落ちていたら、代理で判断するのは家族です。介護のプロでも、この判断はできません。投資信託も運用自体はプロに任せていても、購入や売却するタイミング、口数を決めるのは自分です。

在宅介護は少額投資、見極めながら持続可能な道を探る

投資初心者が投資を始める際、いきなりまとまったお金を投資するのではなく、少額から始めたほうがリスクを減らせます。少額で投資をしながら、利益や損失を出す中で、金融商品の意味を理解したり、相場やチャートの読み方を学んだりします。

介護に例えるなら、私は少額投資が在宅介護に充たると考えています。在宅で介護を続けていると、介護保険サービスの役割や意味を理解するようになります。その中で自分はどこまで介護に参加できるか、どの部分をプロに託すのかなどの見極めができてくるのです。

もし最初から親を介護施設に預けてしまったら、介護のプロに任せて安心だからと、介護について何も勉強しないままかもしれません。

介護費用の面でも、在宅介護でスタートする方が有利です。親が元気なうちから施設介護を選択すると、在宅介護よりも多くの費用がかかるからです。

介護費用は、親の資産から捻出するのが基本です。親の資産を守りながら、終わりの見えない介護を続けていくためには、まずは在宅で介護を始め、介護の知識を調べながら、施設介護を検討するのがよいのではないか、というのが私の考えです。みなさんも投資と同様に試行錯誤しながら家族の介護についてもぜひ考えてみてください。