先週の上海証券取引所と深セン証券取引所は4月4日(木)と5日(金)が「清明節」の祝日のため休場で、3営業日の短い取引でした。しかし、香港証券取引所は「清明節」の祝日による休場は4日(木)のみで5日(金)から取引を再開しています。そして、その5日(金)の香港取引市場は大幅安となり、香港ハンセン指数は2012年11月以来の安値に下落しています。原因は中国の国営メディアが鳥インフルエンザ「H7N9型」に感染し6人が死亡したとのニュースを5日に報道したことから、鳥インフルエンザの感染拡大が懸念されたためです。ちなみに中国本土ではこの死亡した6人を含む16人の感染が確認されています。
2003年にSARS(重症急性呼吸器症候群)の感染拡大が懸念された時もそうでしたが、旅行需要が大幅に落ち込むとの懸念から航空株を含む旅行・レジャー関連株が特に大きく下落しました。もっとも、今回の鳥インフルエンザ「H7N9型」はSARSとは異なり、人から人への感染は、確認されておりませんのでSARSほど大きな被害にはならないものと思われます。しかし、鳥インフルエンザ「H7N9型」は引き金であっただけで、根本的な下落の背景としては、これまでも何度かお伝えしたとおり、中国政府の金融政策が緩和から中立に引き締められていることがあると思います。中国経済のスローダウンは香港経済にも大きな影響を与えます。
中国の金融政策が再び緩和方向に振れるには消費者物価指数(CPI)が中国政府の目標とする3.5%の上昇よりも大幅に低くならなくてはなりません。しかし、直近で発表されている2013年2月のCPIは前年同月比3.2%増となっており、1月の2.0%増を大きく上回っただけでなく、通年目標の3.5%までと比べてもあまり余裕がない数字となっています。もっとも2013年2月は旧正月の影響があるため(2012年は1月が旧正月であったため)、前年同月比ベースでは通常よりも高い数値となっていることがあります。今後のシナリオを考えると、4月9日に発表予定の中国の3月のCPIが市場コンセンサス予想である2.5%増を下回って着地し、鳥インフルエンザにこれ以上の感染者や死者数がでなければ、香港ハンセン指数は節目となる200日移動平均線よりも上で反発することになり、チャート的に中期的な調整局面入りを避けることが出来る可能性が出てきます。しかし、3月のCPIが市場コンセンサス予想を上回る悪い結果となったり、鳥インフルエンザで新たな感染者や死者数が出ると、香港ハンセン指数は200日移動平均線を割り込み、中期的な調整局面に入ってしまうところだと思われ、注意が必要です。
コラム執筆:戸松信博