お盆休みの調整でぽっかり空いた平日の午後、東京都美術館へ。目的は日本ではおよそ20年ぶりとなるマティス展。アートに造詣が深いわけではないので感じたままに感想を述べると「これでいいのだ!」

生涯において画風が大きく変わる画家は珍しくないのかもしれませんが、マティスもまた絵画だけでなく彫刻、版画、切り絵などあらゆる作品を生み出しており、その作風の変化が強く印象に残りました。作風が変化する過程にはどのような心境の変化があったのでしょうか。ドローイング(スケッチ)もたくさん展示されていましたが、子供が書いたのかと思うような作品も多く「これがマティス?」と感じたりしながら最後、最晩年の作品である切り絵を見たときの感想が「これでいいのだ!」なのです。

晩年の作風には清々しい開放感を感じ、すっかりマティスに魅了されました。超絶技巧とは対局にある自由な切り絵の数々、そして今回この東京マティス展のために撮り下ろされたというヴァンス・ロザリオ礼拝堂の映像にみるステンドグラスのあまりにシンプルな美しさには心打たれました。重厚な絵画やステンドグラスで彩られた礼拝堂って、ちょっと怖いじゃないですか。どうしても畏怖の念を抱いてしまう。マティスの礼拝堂はきっと全てを包み込んで許してくれるだろうという暖かな空気に溢れています。色彩の魔術師と呼ばれるマティスですが、子供でも描けそうなデッサンにも癒やしのヒントがありそうです。

「これでいいのだ!」自分の人生でも自分を肯定できるようになるには随分時間がかかりましたが、このフレーズがポンッと脳裏に浮かんだマティス展。そうそう、「これでいいのだ!」のセリフで有名な「バカボン」はサンスクリット語の「Bhagavad(ヴァガバッド)」。お釈迦様のことです。つまり覚れる者=ブッダの覚りの言葉。

マティス展は今週日曜日、8月20日までです。終了前にぜひ。