モトリーフール米国本社、2023年8月15日 投稿記事より

主なポイント

・アーク・インベストメント・マネジメントは、自律走行による配車サービスプラットフォームの年間売上高が2030年に9兆ドルに達すると予想
・テスラがライバル企業よりも多くの自律走行データを持っているということは、優れたAIを持っていることを示唆するものであり、同社は2024年にもロボタクシーの量産を計画している
・アルファベットのウェイモは、自律走行による配車サービスを商業化した最初の企業であり、将来的に自律走行トラック輸送にも乗り出す計画である

ストラテジストのジーン・マンスター氏は、テスラ[TSLA]とアルファベット[GOOGL]のウェイモが自動運転自動車から恩恵を受ける最も好位置にいると指摘

ウォール街のストラテジストであるジーン・マンスター氏が初めてアップル[AAPL]を推奨したのは2004年6月で、当時の株式分割調整後の株価は0.50ドルでした。もし、その時にアップル株を買っていたら、今頃は莫大な利益を手にしていたことでしょう。2004年6月以降に株価は41,710%上昇しており、当時の2,500ドルの投資は、現在では100万ドルになっていたはずです。

興味深いのはこれだけではありません。アップルを最初に推奨して以降、マンスター氏は数々の予見をしています。例えば、同氏は2012年に、アップルが1兆ドル企業になると予想した最初のアナリストとなり、この予想は2018年に現実となりました。その後、アップルの時価総額が2020年に2兆ドルになると言い当て、そのすぐ後に目標値を3兆ドルに引き上げ、この予想は2023年に実現しました。

マンスター氏の予測が驚くほど的確であることから、同氏の最新の洞察には興味をかき立てられます。同氏は最近、CNBCに対し、自動運転自動車は必ず実現すると語りました。同氏は、技術がまだそこまで到達していないと認めた上で、テスラ[TSLA]とアルファベット[GOOGL]傘下のウェイモの2社が、ロボタクシー競争の勝者として最も近いところにいると指摘しました。

これらの人工知能(AI)関連銘柄について、詳しく見てみましょう。

テスラ[TSLA]

世界の電気自動車(EV)市場は、年率23%で成長して2032年には1兆7000億ドルに達すると見込まれており、その中でテスラは最も優位に位置しているとみられます。バッテリーEVにおける同社の市場シェアは、2023年上半期に0.6%上昇して21.8%となりました。一方で、第2位のBYDの市場シェアは同期間に0.3%低下して15.1%となりました。また、テスラは2022年に世界の量産自動車メーカーの中で最も高い営業利益率を記録し、イーロン・マスクCEOはこれを製造技術の向上によるものだと説明しています。

同社の経営陣は、完全自動運転(FSD)技術によって将来的に利益率はさらに上昇すると考えており、ウォール街の複数のストラテジストも、自動運転自動車が事業にもたらす影響について同様に楽観視しています。マンスター氏は、FSDソフトウェアによって売上高は今後5年間で200億ドル増加し、営業利益は今後10年間で1000億ドルに達する可能性があるとみています。この営業利益予想は年率23%の成長を意味します。

さらにテスラは、自社のFSD技術を自律走行配車サービスネットワークにも活用し、収益化する見通しです。詳細はまだ明らかになっていませんが、マスク氏は、完全自律走行が年内にも達成可能であり、2024年にはロボタクシーを量産する予定だとしています。いずれにしても、同社は自律走行分野のリーダーになる絶好の位置に付けています。

テスラは、どのライバル企業よりも多くの自律走行データを保有しており、これは優れたAIを持っていることを示唆しています。つまり、FSD技術を足掛かりに、テスラは利益率の高いソフトウェアおよびサービス企業へと飛躍的に進化する可能性があるのです。実際に、アーク・インベストメント・マネジメントは、ロボタクシーの年間売上高が2030年に9兆ドルに達すると述べ、マスク氏も、FSDソフトウェアが粗利益率を現在の21.5%から70%(またはそれ以上)に押し上げる可能性があると述べています。

現在、テスラの株価売上高倍率(PSR)は8.8倍であり、過去3年間の平均値である16倍よりは割安ですが、他の自動車メーカーと比べると大幅に割高です。ロボタクシーに関する見通しを信じるなら、今のテスラは買い時かもしれません。

アルファベット[GOOGL]

アルファベットの傘下で自律走行を手掛けるウェイモは、2つの側面で輸送とモビリティを破壊することを目指しています。Waymo Oneは配車サービスを提供し、Waymo Viaは自律走行によるトラック輸送と物流サービスを提供します。アルファベットは両セグメントを相次いで立ち上げましたが、最近になって配車サービスを優先し、自律走行トラック輸送のスケジュールを遅らせることを決めました。

ウェイモは自律走行による配車サービスを商業化した最初の企業であることから、今回の決定は、足元の勢いを維持することを目的としていると思われます。同社のロボタクシー・プログラムは2018年にアリゾナ州フェニックスで始動し、その後、Waymo Oneのサービスエリアはサンフランシスコ(2022年)とロサンゼルス(2023年)にも拡大しています。同社は先日、次に展開する市場として、テキサス州オースティンを挙げました。

ウェイモはなぜ、都市ごとに拡大しているのでしょうか。ウェイモは、大都市で配車サービスの提供を開始する前に、LiDAR(レーザーによる計測技術)を使って詳細な地図を作成しています。列車が移動するためにレールを必要とするように、ウェイモのロボタクシーが移動するにはこうした地図が必要です。この戦略の利点はスピードです。ウェイモは商業化でテスラをリードしましたが、欠点は拡張性が低いことです。ウェイモは、サービスを展開する都市ごとに詳細な地図の作成と修正を繰り返さなければならず、同社のロボタクシーはその地図の範囲内でしか稼働することができません。

テスラのアプローチは異なり、LiDARを使わず、コンピュータービジョンを採用しています。ロジックはシンプルです。人間は2つの目だけを使って運転し、LiDARはありません。つまり、基盤となるAIソフトウェアが正しく訓練されていれば、8台のカメラを搭載したスーパーコンピューターで十分に対応できるはずだという考え方です。テスラは明らかにより困難な戦略を選択していますが、拡張性という利点があります。いずれFSDソフトが完全なものとなれば、それを搭載したすべての車両がスイッチ1つで自律走行できるようになるはずです。

しかし、アルファベットにとって、ロボタクシーは投資テーマのほんの一部にすぎません。同社の主な成長エンジンは、デジタル広告とクラウドコンピューティングです。傘下のグーグルは世界最大のアドテック企業、世界第3位のクラウドサービスプロバイダーであり、どちらの市場も2030年にかけて年率14%の成長が見込まれます。アルファベットは、少なくともこのペースの売上成長が可能ですが、もし、ウェイモのような他の事業が実を結べば、さらなる成長も期待できます。

現在のPSRは6倍で、過去3年平均の6.5倍よりやや割安となっています。この成長株に少額を投資するのにリスクは小さいと思われます。

免責事項と開示事項  記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。アルファベットの幹部であるSuzanne Freyは、モトリーフール米国本社の取締役会メンバーです。元記事の筆者Trevor Jennewineは、テスラの株式を保有しています。モトリーフール米国本社はアルファベット、アップル、BYD、テスラの株式を保有し、推奨しています。モトリーフールは情報開示方針を定めています。