先週の上海総合指数、深セン総合指数は急反落。特に3月28日(木)に大きく下落しました。これは銀行業監督管理委員会が銀行の資産運用商品に関する管理を強化する通知を発表したことによります。具体的には資産運用商品を単独で管理し、販売して得た資金の投資先を商品ごとに明確に定めるように銀行に指示が出たものです。要するに銀行が短期利回り商品を設定して、これを大量に販売してきたわけですが、その運用内容が不透明で、明確でなかったため、その管理を義務づけたものです。

現在の銀行の資産運用商品の販売の仕組みでは資金が流入し続けているうちは全く問題ないのですが、何かの弾みで株価等が急落し、一気に引き出しが行われた場合、負の連鎖となってしまい、銀行システムに深刻なダメージが与えられてしまう可能性があります。銀行業監督管理委員会の狙いとしては、その危険性を排除するために予め対応策を講じたことになります。実際のところ、中国四大銀行の2012年末の資産運用商品の残高は約3兆元に達しています。今回の指示は将来のリスクを見据えたまっとうな処置なのですが、短期的には銀行の収益力低下につながってしまい、また、金融引き締め策の1つとも取れるため、銀行株を中心に株価が大きく下落したわけです。

一方、香港証券市場は3月29日がグッドフライデー(聖金曜日)で休場となり、先週は4日間の取引となりました(ちなみに4月1日もイースターマンデー(復活祭翌日の月曜日)の祝日のため休場となっています)。先週の株価は、ほぼ横ばいで推移。香港市場では高値更新が続いている米国株高が意識されたほか、相次いで発表されている2012年の好決算を好感した格好です。しかし前述の上海総合指数、深セン総合指数の下落が相場の頭を抑えました。今後ですが引き続きポジティブな政策待ちの状況です。その一方で、香港株は米国株の動向の影響も受けますが、米国株は「Sell in May」という相場格言もあるとおり、春に高値を付けやすい傾向がありますので、今後は市況の変化に注意が必要です。

コラム執筆:戸松信博