政策方針が明らかになる中、不動産株やネット株が上昇

2023年7月の中国本土市場・香港市場は終盤に大きく上昇しました。2023年7月3日終値~7月31日終値までの騰落率は、上海総合指数が+1.5%、香港ハンセン指数が+4.0%となっています。

上海総合指数、香港ハンセン指数共に7月24日までは軟調な動きが続いていたのですが、最後の1週間で大きく上昇しました。上海総合指数、香港ハンセン指数共に、7月24日までは株価が50日移動平均線や200日移動平均線の下に位置していたのですが、一気に両移動平均線を株価が上に突き抜ける相場展開となっています。

株価が上昇した要因ですが、7月24日に中国共産党中央政治局会議が開かれ、安定成長維持に向けた政策方針が打ち出されたことが要因です。「不動産政策を適切な時期に調整・最適化する」、「地方政府債務リスクを効果的に予防する」などの方針性が確認された他、若年層の失業率が20%を上回る中、「雇用安定化を戦略的レベルに引き上げる」などの方針も明らかになっています。大型の景気刺激策では無かったものの、少なくとも指導部が景気底上げに向けた一段の決意を示した格好で、株価は大きく上昇で反応しました。

その後、虹住宅都市農村建設相が住宅ローン金利や初めて住宅を購入する人の頭金比率の引き下げなどを求めていることが伝わると不動産株が大きく上昇しました。

また、中国の商務部と国家改革発展委員会はテンセント(00700)や美団(03690)などの大型ネット企業に対し、消費、通信、メディア企業への投資成功案件の情報提供を求めたとも伝わっており、国家改革発展委員会は「微信(WeChat)」公式アカウントで、「プラットフォーム企業が技術イノベーション、従来型産業の転換を支援する上で数多くの典型案件を成し遂げた」と投稿しました。

テンセント、アリババ・グループ・ホールディング(09988)、美団の社名を挙げ、これらの企業の投資は中国の国策と目標に合致していると称賛しています。これによってネット株も大きく上昇しています。

7月終盤の上昇基調が続くかどうかは政策次第

ところで7月に発表された中国の経済指標は全体的に軟調でした。第2四半期のGDPは前年比6.3%増(市場予想7.1%増、前期実績4.5%増)、6月の鉱工業生産は4.4%増(市場予想2.5%増、前月実績3.5%増)、小売売上高は3.1%増(市場予想3.3%増、前月実績12.7%増)、7月の中国国家製造業PMIは49.3(市場予想48.9、前月実績49.0)、非製造業PMIは51.5(市場予想53.0、前月実績53.2)となっています。

経済指標が弱いからこそ、中国共産党中央政治局会議で安定成長維持に向けた政策方針が打ち出されたわけですが、反対に言えば、しっかりとした政策が出てこなければ再び株価は軟調な推移へと逆戻りする可能性があるとも言えるわけです。

そして、今のところは矢継ぎ早に政策が打ち出されているようにも見えます。中国の国務院弁公庁は7月28日に自動車購入・使用への管理の最適化を図るとし、各地が新たな自動車購入規制を打ち出すことを禁止しました。また、購入規制が実施されている地域でも各地の現状に応じて措置を最適化するよう求めました。

また、国務院は7月31日に開いた常務会議で、景気変動の影響を抑えるカウンターシクリカルな調節と政策手段の検討を強化し、機を見て新たな政策を打ち出すと表明しています。ただ、これらに対する株価の反応は薄く、上海総合指数、香港ハンセン指数共に7月31日は上ひげを付ける形のローソク足となっています。

マーケットは経済を大きく好転させるような大規模景気刺激策を待っているわけですが、これまでのところそういった政策が発表される気配はありません。7月終盤の株価上昇が継続するかどうかは中国当局がこれから打ち出す政策によって決まってくる状況と言えます。