マネックス証券の投資教育部門であるマネックス・ユニバーシティでは、現役の中学生、高校生の皆さんから、お金にまつわる素朴な疑問・質問を募集。それに答えることで、お金のことをわかりやすく解説する『世界を知る大人になるための本気の「お金」授業』を連載しています。

第7回目となる今回は特別編として、ブログ「たぱぞうの米国株投資」やYouTubeチャンネル「たぱぞう投資大学」などを運営し、米国株を中心とする海外投資の専門家として多方面で活躍する、たぱぞうさんにインタビュー。2000年から投資をはじめ、2017年には資産1億円を達成。2019年に独立し、現在は資産管理法人2社を経営しながら、個人投資家の資産形成について積極的に発信するたぱぞうさんは、お子さんたちにお金や投資についてどのように伝えてきたのか。たぱぞう家の「リアルな金融経済教育」に迫ります。

たぱぞう家が「年俸制お小遣い」を実践するワケ

――たぱぞう家が取り入れているお小遣い制度について教えてください。

だいたいのご家庭では「月々いくら」というかたちでお小遣いを渡していると思いますが、わが家はちょっと変わっていまして、お小遣いは「年俸制」。1年のはじめにまとめて渡して、子どもたち自身で管理しています。

月1回のお小遣い制にすると、金額が少ないこともあって、コンビニで目にとまったものをちょこちょこと買ってしまうなど、どうしても「残らないもの」に使ってしまいがちです。ある程度、まとまった金額のほうが、子ども自身が考えた「必要なもの」にお金を使うのではないかと思い、年俸制にしました。

私の著書でもある『僕が子どもに教えている1億円のつくり方』でも伝えているのですが、「お小遣いの2割は貯金する」「お年玉の半分は貯金する」といったことを、子ども時代からの習慣にしてほしいという気持ちもあります。

また、子どもが小学生ぐらいだとお小遣いを現金で渡すことが多いと思うのですが、今のようなキャッシュレス時代では、親も手元に現金や小銭がないことが多いですよね(笑)。お小遣いを支給する側の効率なども考えた結果、「年のはじめにまとめて渡す」というスタイルになりました。

――お子さまへのお小遣いの金額はどれくらいですか

小学生のうちは、1ヶ月あたり「学年×100円」、中学生になると「学年×1000円」と、シンプルな方法で決めています。たとえば中学3年生であれば、1ヶ月3000円、年俸では3万6000円になります。高校生になると付き合いも増えるので、1ヶ月5000円にアップ。高校2年生で月6000円、高校3年生で月7000円と段階的に上げ、プラスして一日400円×20日分のお弁当代も渡していました。たとえば、高校1年生だったらお弁当代を合わせて1カ月あたりの額は1万3000円。「年俸」にして15万6000円という計算です。

小学生時代は「現金」を手渡してお金の価値を体感

――年俸制でお小遣いをもらうとなると、うまく管理できずに、途中で足りなくなることもありそうですが…。

子どもたちが小さいころから教えていたのは、「今あるお小遣いを将来に振り分けて考えること」です。「お小遣いの2割は取っておく」「お年玉の半分は取っておく」などを伝えてきました。ただ、子どもの個性によって、お金との付き合い方は変わります。我が家の場合、長男は、年のはじめに渡したお小遣いを年度末には使い切ってしまうタイプ(笑)。その代わり、足りなくなったら自分でアルバイトをして賄うなど工夫をしていました。

一方、次男は、幼い頃からお金や投資に興味津々。お小遣いもずっと貯めていて、小学校高学年のころから、「投資信託を買いたい」と言ったり、私の蔵書も自然と読みはじめました。兄弟にもそれぞれの個性があって、お金に対する興味・関心や価値観はずいぶん違うものだな、と子育てを通して実感しました。

――お小遣いは現金、あるいはキャッシュレス、どちらでお渡ししていますか?

今は、PayPayなどのキャッシュレス決済アプリでお小遣いを支給するご家庭も増えているようですね。わが家は子どもたちが小学生のときは現金で渡していましたが、中学生になった時点で銀行口座への振り込みに変えました。

子どもが小学生のうちは、現金のやり取りを通じて、お金の価値を体感することが大事ではないかと思っています。数字を抽象的な概念として捉えられるようになってきたら、現金以外でのお小遣いを取り入れてもよいかもしれません。

抽象的思考へ切り替わる時期は子どもの成長やタイプによって違うので、「お小遣いの渡し方」については、親子で相談しながら決められるといいですよね。

「フローをストックに置き換える」経験を第一歩に

――年俸制お小遣いのやりくりをすることで、お金に対するセルフコントロールや「貯める習慣」が自然と身に付けられそうです。

お小遣いの管理を通して、子どもたちに伝えたかったのは、「フローをストックに置き換える」習慣です。フローとは収入や支出などお金の出入り、ストックとは運用している資産のこと。資産運用の第一歩は、収入と支出をコントロールしてお金を貯め、それを投資に回して増やしていくことです。

子どもにとっては、お小遣いやアルバイト代がフロー収入、貯蓄がストックにあたるので、こうした管理も資産運用のよい練習になると思っています。「こういう習慣は将来の資産形成につながるよ」などの知見は伝えていますが、それをこの先の人生にどう活かしていくのかは本人次第。子どもは生まれ出た時点で親とは別人格ですから、彼らのパーソナリティーや自分で下した判断を尊重しています。

――お金の「使い方」については、どのように伝えられていますか。

使ったらすぐになくなるものよりも、「何らかの価値が残るもの」にお金を使ったほうがいいということや、カードローンやリボ払いなどのリスクについては、折りに触れて伝えています。「あのスニーカーがほしい」とか、「カッコいい車に乗りたい」といった気持ちは否定しません。でも、買いたいモノにリセールバリューがあるのか、お金を投じて得た経験は自分の人生を豊かにしてくれるのか、といった視点も持てる大人になってほしいと思っています。

「変化の激しい時代」に伝えたい2つの教育

――投資については、お子さまにどんなお話をされていますか?

投資に関しては、変化の激しい時代に即した教育と “不易”の教育、この2つを意識して話をするようにしています。家庭の金融教育で教えたいのは、私たちは「投資が必須の時代に生きている」という大前提と、いつの時代も変わらない「フローをストックに置き換える」というシンプルな資産形成のルールです。

一方で、変化する時代に対応するには、子ども自身がベストな方法を選択する力を身につけないといけません。たとえば、バブル時代のような「貯金さえしておけば大丈夫」といった私たちの親世代の「お金の常識」は、今では現実味が薄れてきています。それと同様に、今を生きる子どもたちも、親のアドバイスに従っているだけでは行き詰る時期がやって来ると思うのです。

私が子どもたちにできるのは、まず自分自身が投資を実践し、そのプロセスを見せること。そこから先は、子どもたちが消化して、それぞれの人生に活かしてくれればと思っています。「夢中になれることを見つけて、好きな仕事に就いてほしい」という思いは親としてありますが、子どもの選択にはあまり介入せず、そっと見守っていきたいですね。

――知識を得た後に大事なのは「自分で判断する力」ということですね。最後に「金融・経済のことがもっと知りたい」という中高生におすすめの投資本を教えてください。

高校生なら、ジェレミー・シーゲルの『株式投資の未来』(日経BP)、チャールズ・エリスの『敗者のゲーム』(日本経済新聞出版)、バートン・マルキールの『ウォール街のランダム・ウォーカー』(同)などの古典的名著。難しいと思うかもしれませんが、投資に興味があるなら十分に読めると思います。日本の著者では、奥野一成さんの本『ビジネスエリートになるための投資家の思考法』(ダイヤモンド社)などが分かりやすくておすすめです。読書が苦手なら、まずは『漫画 バビロン大富豪の教え』(文響社)から読んでみてはいかがでしょうか。