3月17日に閉幕した全国人民代表大会からの材料待ちの状況が続いていた先週の上海総合指数、深セン総合指数ですが、週間では共に下落となりました。下落の要因は2つあります。1つは人民銀行が公開市場操作を通して資金を吸収していることが中国経済のスローダウンを招くだろうとの懸念につながったこと。もう1つは中国政府の不動産市況に関する引き締め策への懸念です。先週は深セン市政府が不動産開発会社の新築住宅登録に対して、価格が一定範囲を超える場合は却下していると報じられたことがネガティブな材料になりました。

中国政府がインフレを懸念して引き締め姿勢に入っていることは、一連の不動産に関する規制や、人民銀行が資金を吸収していることを見ても明らかなように思えます。先進国が揃って金融緩和をしている状況のなかで、世界的にお金あまりの状況が発生し、それが中国にも影響してきているところです。本来ですと先進国はそろそろ引き締めに入っても良い局面ですが、先進国は新興国と比べ、もともとの成長力が低いので、十分な成果が得られず、この緩和策はまだまだ続く見通しです。このような状況の中で中国はバブル発生を懸念して早期に引き締めに動いている訳です。全国人民代表大会の閉幕にあたり、李克強首相が「最重要課題は持続可能な経済成長を維持すること」とコメントをしましたが、現在中国がしている、バブルを未然に抑える政策はまっとうな対応だと思いますが、短期的に株式市場にはネガティブです。

 もっとも、株価が下がり、値頃感が出てきてきたことから週末には押し目買いが入り、小幅に反発しています。また、3月14日に中国証券監督管理委員会が適格国内機関投資家(QDII)制度の規制緩和方針を明らかにしたことも好材料でした。今後の株価の見通しですがやはり政策待ちです。中国政府は引き締め姿勢を明確にする一方、前述の全人代閉幕時の李克強首相の会見では「重要なのは経済構造改革であり、改革の恩恵や内需の潜在力、創造性の活力を結集し、経済成長の新たなエンジンとしなければならない」と述べており、都市化や消費刺激策に絡んだ、内需を拡大させる政策が出て来る可能性はあり、そのような起爆剤が待たれるところです。

コラム執筆:戸松信博