先週の上海総合指数、深セン総合指数は共に下落。3月5日に開幕した全国人民代表大会(全人代)での景気刺激策が期待されたものの、3月1日に、中国政府から不動産価格を抑制する政策が発表され、3月4日は不動産株を中心に大幅下落となりました。特に次の2つの政策が懸念されました。1つは住宅価格が急上昇している一部都市で2軒目の住宅購入時の住宅ローンの頭金比率と金利を引き上げると発表されたこと。もう1つは住宅販売にかかる利益をめぐる個人税20%を厳格に執行するよう指示されたことです。

これまで中国政府は都市化を推し進めるためにも1軒目の住宅購入には優遇的な措置を与えるなどの緩和策を採っていただけに、今回の発表は予想以上に強力な引き締め政策でした。もっとも、翌3月5日には、金利の引き上げは銀行の利ざや拡大につながるという思惑から銀行株を中心に反発。しかし、その後は中国人民銀行(中央銀行)がインターバンク市場において回収気味の調整をしていることや、2013年のM2(マネーサプライ)の目標が13%増と、2012年末の13.8%増や2013年1月の15.9%増、2月の15.2%増よりも低い数値で設定されたことから、中国政府が引き締めを始めたとする見方が拡がり、週後半も冴えない値動きとなりました。

一方で、香港ハンセン指数は週の半ばまでは上海総合指数や深セン総合指数と同じような動きだったのですが、週末に急上昇となっています。こちらは米国株や日本株を始めとした世界的な株価上昇を背景に、中国の2月の輸出が前年同月比21.8%増と予想以上に伸びたことを好感したものです。上海証券取引所や深セン証券取引所には直接海外投資家の資金が流れ込めないのに対し、香港証券取引所はダイレクトに資金が流入してくるため、海外市場の影響をより強く受けます。最後に、今週の見通しですが、3月9日に中国国家統計局が2月の中国の消費者物価指数を3.2%増と発表しました。予想は3.0%増だったため、上海総合指数、深セン総合指数は引き続き引き締め政策を懸念した動きとなることが想定されます。一方でハンセン指数は米国株を始めとした世界的な株高に支えられて、比較的堅調な推移が続くことが期待できると思います。

コラム執筆:戸松信博