先週の大幅安は恒例行事の「調整」

先週後半、日経平均は大幅安となった。月末にかけて年金基金のリバランス(資産の再配分)に伴う売りが警戒されたという。さらに、ETFの分配金捻出のための換金売りが7月の7日、10日に現物・先物の合計で1兆1000億円超発生すると見込まれている。こうした需給悪化要因は相場の軟化材料になるだろう。しかし、これらの要因は毎年の恒例行事であり、かつ事前に分かっていることなので大きなリスクではない。需給悪化を警戒して今から調整しているのであれば、ここから大きく崩れる懸念も少ないだろう。

重要イベントはECBフォーラムとFRBのストレステストの結果発表

今週の経済指標は多くないが、27日の米国の消費者信頼感指数、30日発表の6月都区部消費者物価指数と鉱工業生産、中国の製造業PMI、米国PCEデフレーターなどが注目されよう。

重要イベントとしてポルトガルで開催されるECBフォーラムがある。世界の中央銀行トップが集い、パウエル米FRB議長、ラガルドECB総裁、植田日銀総裁、ベイリー英中銀総裁らが講演をおこなう。

もうひとつの重要イベントは、28日にFRBのストレステストの結果発表がある。どちらかと言えば、警戒色が強いだけに、イベント通過で米国の金融株に買いが入れば、日本の銀行株への追い風にもなるだろう。

業績面の材料としては28日に半導体メモリー大手のマイクロン・テクノロジー[MU]の決算発表がある。ソシオネクスト(6526)など東京市場の株高をけん引した半導体関連の一角は急速に調整色を強めているが、マイクロンの決算がそれらの動向にどのような影響を与えるか注目材料である。

注目は産業革新投資機構(JIC)によるJSR買収についての市場の反応

以上、諸々の材料があるなか、今週の最大の注目は産業革新投資機構(JIC)によるJSR買収というニュースに対する市場の反応だ。JSR(4185)は、シリコンウエハーに回路パターンを転写する際に必要な液体樹脂、フォトレジストの世界シェアトップ。それでも世界で生き残るためには規模の拡大が欠かせない。非上場化によって集中的な投資や事業再編をしやすくすることが狙いだ。

日本の半導体素材メーカーは高いシェアを持つが競合が多い。裏返せば技術力は世界有数だが、経営規模は小さい。今回のJSR買収がきっかけとなり、素材メーカー再編の動きが進むかもしれない。その思惑が市場でどの程度反映されるか、大きな注目点である。

予想レンジは3万2000円~3万3500円とする。