◆225年前の今日7月14日、パリのバスティーユに轟いた銃声がフランス革命の始まりであった。国王ルイ16世が「暴動か?」と訊くと、側近のリアンクール公爵は「いいえ、陛下、これは暴動ではなく革命です」と答えたという。

◆現在のフランスの首相、マニュエル・ヴァルス氏は「これは警鐘ではなく、衝撃であり地震だ」と述べた。5月下旬に行われた欧州議会議員選挙で、極右政党・国民戦線が約4分の1の議席を獲得しフランスの第一党に躍進した結果についてのコメントである。党首マリーヌ・ル・ペン氏率いる国民戦線は反EU、移民排斥を掲げて急速に支持を集めている。

◆いつの時代も反体制派の躍進は、既存の政治システムが行き詰っていることの裏返しである。わが国において数年前、民主党政権が樹立された経緯を思い出すまでもない。さて、今の安倍政権、多少低下したとはいえいまだに高い支持率を維持している。それは裏を返せば野党の存在感が一段と低下していることの表れでもある。

◆ステレオタイプの右・左・保守・革新という分類は難しい。それでも敢えて世界を俯瞰してみれば、日本ほど明確にがちがちの保守体制が変わらない国は珍しいのではないか。何度か変えようとしてはみた、けれどだめだったから、またもとに戻ってしまったというところはある。われわれは変われないのだろうか?そんなことはない。保守派の長老、中曽根康弘氏は著書『保守の遺言』の冒頭で「保守せんがために、改革する」という英国のエドマンド・バークの言葉を引用し、「保守政治をするためには常に改革し続けなければならず、それを忘れたら単なる守旧派にすぎない」と述べている。

◆今まさに成長戦略が動き始めた。岩盤規制=「守旧派」との戦いだ。「アンシャン・レジーム」との戦いである。10日前、米国の独立記念日には日本の憲法について考えた。フランスの建国記念日には日本の保守とはなにかについて、思いを巡らせよう。「保守せんがために、改革する」の精神に期待したい。

マネックス証券 チーフ・ストラテジスト 広木 隆